出版社内容情報
自身を産んだ際に植物状態になった母親へ会いに病室へ通う美桜。意思もなく、大人に成長していくなかで、次第に親子の関係性も変化していき─唯一無二の母と娘のありようを描く。第36回三島由紀夫賞受賞作。《解説・河野真太郎》
【目次】
内容説明
自身を産んだ際に植物状態となった母親に会いに病室へ通う美桜。意思疎通できないまま、大人へと成長していくなかで、次第に親子の関係性も変化していき―唯一無二の母と娘のありようを描く静かな衝撃作。第36回三島由紀夫賞受賞作。
著者等紹介
朝比奈秋[アサヒナアキ]
1981年京都府生まれ。作家、医師。2021年「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。受賞作を収録した『私の盲端』を刊行する。23年『植物少女』で三島由紀夫賞、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞、第45回野間文芸新人賞、24年『サンショウウオの四十九日』で第171回芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナミのママ
75
母の記憶がある、それは美しいだけではないが相互の感情を伴うものだ。この作品に登場する母子の形にはそれがない。26年前「わたし」を出産する時に母は植物状態となった。わたしにとっての母は病院のベッドの上、語らない存在だ。それでも生きている、反応もある。そしてわたしの成長と共に母子関係は変化していく。わたしにとって母はたしかに存在し大きな影響を与えた人だった。『受け手のいない祈り』で魅了された朝比奈作品、一作目から順に追っている。生きることを改めて考えさせられる作品だった。【第36回三島由紀夫賞】受賞2025/08/23
バーニング
4
朝日奈秋を読むのはこれで2冊目だが、紛れもない傑作だと思う。三島賞受賞は当然の結果だろう。河野真太郎の解説は、朝日奈秋が本作にこめた狙いや複雑性を丁寧に分析していて良い。河野がアジールと名付ける病室の空間は、生と死の狭間にいる人間が唯一生きることを許された場所なのかもしれない。心臓が停止していない限り、生きている者として扱う。それが可能な場所は、制度的にも理念的にも病室でしかありえないという現実をどのように受け止めるべきか。2025/08/26
あきら文庫
0
読書記録2025/08/20