出版社内容情報
バブル絶頂期の1990年、個人として史上最高額4300億円の負債を抱え自己破産した朝比奈ハル。平成が終わる年、彼女はひっそりと獄死した。彼女のことを小説に書こうと決めた私は関係者に聞き取りを始める──。解説・芦沢央。
内容説明
バブル期に個人として史上最高額の負債を抱え、自己破産した朝比奈ハル。「北浜の魔女」と呼ばれた彼女は、詐欺と殺人の容疑で逮捕され、平成が終わる年にひっそりと獄死していた。その生涯を小説にしようと、“私”は彼女の生前を知る関係者に取材を始める。
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。作家。2013年『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。19年『凍てつく太陽』で大藪春彦賞、日本推理作家協会賞、22年『灼熱』で渡辺淳一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
76
昭和8年、和歌山の貧しい漁村に生まれたハルは戦後からバブルまで時流に乗って時代の寵児となり、その後バブル崩壊と共に詐欺や殺人などの罪で服役するまでの一代記。周辺の人々の証言から成るお話で、その時代時代の様子が語られるのがまた面白い。この作家さんはこうした社会の歪みとか問題点を抉るのが本当に上手だと思う。辛い経験を糧に男を上手く利用し、自分の生きたいように生きたハルがかっこ良いのよね。自由にワガママに生きるにはお金が全て。それは真実だよなあ。良い悪いは別にして。モデルがいたらしいので、そっちも調べてみたい。2023/12/16
タルシル📖ヨムノスキー
23
1980年代半ばに「北浜の天才相場師」と称された投資家にして、バブル崩壊後は多額の詐欺事件にも関与した尾上縫さんをモデルにした物語。物語の中では「北浜の魔女」朝比奈ハルという名で語られ、主人公が彼女の半生を小説にするために、彼女と関係のあった人物を尋ね歩きます。読みどころは朝比奈ハルという女性の生き様を、彼女本人ではなく関わった人々の証言から描いているところ。全編モノローグやインタビューに答える形で話が進んでいくという構成も面白い。それと忘れてならないのがミステリーの部分。バブルという時代の解説書的一冊。2024/04/20
ぴ〜る
16
いつも社会問題などスパッと切り付けてくる葉真中顕さんの作品。読み終えてみて自分の感情がどこに着地すればいいのか宙ぶらりんのような気持ちになった。けれど、芹沢央さんの解説を読んで何かがストンと心に落ちた。2024/02/03
lily
14
「北浜の魔女」と称された朝比奈ハルを小説にしようと考えた「私」が、関係者へのインタビューを通じて彼女の人物像に迫る証言小説。「ガマガエルのお告げ」によって巨額の株式投資に成功した尾上縫(この人自体初耳だった…)をモデルにした作品だが、彼女の波乱万丈な伝記として、インタビュアーが誰かという点から真相に迫るミステリーとして、また信仰・貧困・LGBTなどインタビュイーの背景にある社会派小説としてなど様々な側面から楽しめる贅沢な一冊となっている。葉真中顕にハズレなし。2023/12/19
JKD
12
幸せは欲望を押さえ込んでまで手に入れるものではない。我慢せずワガママに好きに生きることが幸せ。かつて北浜の魔女と言われた朝比奈ハルの人生が数奇なもので、幸せを追い求めていたことはぼんやり理解できたが、殺人の動機とかインタビュアーの意図がいまいち読み取れず時間を要した。読後に芹沢さんの解説読んで本書の意図がようやくわかった。でもまだぼんやりしている。2024/02/14