出版社内容情報
北極グマの剥製に頭をつっこんで絶命した伯父。残された伯母は、夜ごと死んだ動物たちに「A」の刺繍をほどこし続ける。この青い瞳の貴婦人は、ロマノフ王朝の最後の生き残りなのか? 若い「私」が古びた洋館で過ごしたひと夏を描く、とびきりクールな長編小説。新装版に寄せて、著者の長年の愛読者である中嶋朋子氏が巻末エッセイを寄稿。
内容説明
北極グマの剥製に頭をつっこんで絶命した伯父。死んだ動物たちにAの刺繍をほどこし続ける伯母。この青い瞳の貴婦人は、ロマノフ王朝の最後の生き残りなのか?若い「私」が古びた洋館で過ごしたひと夏を描く、とびきりクールな長編小説。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で本屋大賞と読売文学賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、12年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、20年『小箱』で野間文芸賞を受賞。21年に菊池寛賞、紫綬褒章、23年に日本芸術院賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
129
『目の前にいる老女は、ロマノフ家最後の生き残り、アナスタシアではないだろうか』。主人公の『私』がひと夏を一緒に暮らした伯母との生活が描かれていくこの作品。そこには、伯父が残した数多の『動物製品』に囲まれる不思議感漂う物語が描かれていました。『ロマノフ王朝』の最期に隠された噂に興味が募るこの作品。モノにこだわる小川洋子さんの真骨頂とも言える描写に満ち溢れたこの作品。謎を抱える伯母の存在を雰囲気感抜群に描いていくその上手さ、新装刊の表紙際立つ中、小川さんの鮮やかな筆致に魅せられっぱなしの素晴らしい作品でした。2024/10/18
クリママ
48
裕福な伯父と高齢での結婚後10年で死に別れ、伯父が収集していた大小の動物のはく製が所狭しと置かれた屋敷で私と暮らすことになった78歳のロシア女性。彼女は、自分の持ち物だけでなく、はく製にさえイニシャルの”A”を刺繍する。はく製を商売とする胡散臭い男が現れたことによって、彼女の素性が明かされようとする。誰にも好感が持てなかったが、次第に私や私のボーイフレンドの優しさがにじみ、男の真摯さもわかってくる。彼女はアナスタシアなのか。その疑問以上に、現実を越えた世界が不穏であり優雅だ。2024/11/23
まさ
28
"アナスタシア"伯母さんと周囲の人たちの日々。読みながら心がざわつくのは、誰しもが持つ歪さが如実に現れているから。それでも受け容れられているのは、小川洋子さんの世界であり、自分たちの日々でもそうだろうと気づく。何も語らない剥製たちは死と生の狭間を表しているよう。死・終焉に直面してまた存在感を示している。2024/02/03
あんこ
20
再読。適切な生き場所、適切な死に方。小川さんはいつだってその人にとって一番しっくりくる場所に目を向けてくれる。あまりに優しげな語り方と思い出の色鮮やかさに思わず泣きたくなる。一人一人はきっと歪かもしれない存在でも、その凸凹を無下に扱うことなく掬いあげてくれる。そしてこの人たちはもういない人たちなのだと分かっているのに、定期的に読み返しては何度でも惹かれ、最初は胡散臭く思えてしまう登場人物のことも、何度でも愛しく思えてしまう。小川さんの作品に満ちた慈愛によって、読者である私もまた生かされているように思う。2024/06/30
ぜんこう
19
ひたすら「A」の文字を刺繍する伯母(皇女アナスタシア?)、ドアを入るのに儀式をしないと入れるか入れないかわからないニコ。違うかもしれないけど「猫を抱いて象と泳ぐ」のリトル・アリョーヒンを思い起こした。そして物語の語り部の姪御さん。小川洋子さんの基本的に乾いた静かな世界、あまり色彩はないけど伯母の青い瞳だけがしっかり色づいてる。なんかあっけない最後やったけど、いい世界をみせてもらいました。2024/07/22
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