出版社内容情報
小学生のころ、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。(「オブジェクタム」)、第2回林芙美子文学賞受賞作(「太陽の側の島」)、敗戦後に戦地から復員した夫は、出征前と同じ人物なのか。(「如何様」)など、芥川賞作家が描く短編集。
内容説明
小学生の頃、秘密基地で壁新聞を作っていた祖父が隠していたものとは(「オブジェクタム」)。敗戦後、戦地から復員した夫が見知らぬ姿となって帰ってきた(「如何様」)。文芸界の話題をさらった2冊を合本、著者のエッセンスが凝縮された初期作品集。
著者等紹介
高山羽根子[タカヤマハネコ]
1975年富山県生まれ。作家。2010年「うどん キツネつきの」で創元SF短編賞佳作、16年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞、20年「首里の馬」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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路地
47
別人としか思えない姿で復員してきた夫貫一を巡る物語である『如何様』。なんとは無しに受け入れる妻と、正体の解明を請け負った探偵のこれまた軽妙な様子とは裏腹に、贋作・模写を手掛けていた貫一のことを、近しい関係にあった者も正確に認識していない底知れなさが面白い。奇妙なのに不気味ではなく、そんなこともあるかなと受け入れてしまう不思議さは、もう一つの表題作である『オブジェクタム』にも共通する。2022/11/03
ベル@bell-zou
26
祖父との思い出と秘密に郷愁をくすぐられる「オブジェクタム」、戦地へ赴いた夫と待つ妻の思いやり温かな往復書簡と突如明らかになるその世界の姿に驚く「太陽の側の島」、復員した男は果たして本物か?主人公であるはずの男は最後まで文字通り現れない「如何様」。登場人物も物語も互いに無関係なのに繋がりを感じる不思議。高山羽根子さんは随分前から気になっていて『スカートのアンソロジー』で読んだ「ススキの丘を走れ(無重力で)」や読み友さんたちの感想でいつか必ずと決心していたところこの短編集を発見。とても好みで、とても満足。2022/08/20
one_shot
20
オブジェクタムとは聞きなれない言葉だが、ラテン語では語尾にumをつけると容れ物という意味が付加される。つまり対象の容器、客観の収納場所ほどの意味となる、なんて小難しいことは考えずにただ楽しめば良いようだ。時々町の壁に出現する壁新聞のことから奇想が広がる表題作、戦争から復員した絵描きの夫はどうも別人らしいが誰もその真相を正そうとしない「如何様」など中短編5篇+エッセイ1篇。不思議でシュールなのに身につまされるのは何故だろう。この人の近作も読んでみたい。2022/10/11
ちょん
19
ちょっぴり戦後色漂う短編集。純文学になるのかな?表紙とタイトルにやられて購入。難しそうな雰囲気だけど何とか読めました。読んでる途中あまり気にしてなかったけど、物語の情景が頭の中でめちゃくちゃ再生されるので、こういう所に作者の力って伝わってくるんだなぁと感じ入りました✨2023/03/24
桜もち 太郎
16
確かに読み応えはあった。現実と幻想がなんとなく入り混じり、本物とは何なのかを考えさせられる「如何様(いかさま)」が面白い。戦争が終わり南国から帰って来た夫が全くの別人、それでも当たり前のように過ごす家族が猟奇的に感じた。それにしても不思議と言うか何と言えばいいのがわからない、捉えどころのない作品集というところで、感想を書くのも難しい。2024/02/06
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