出版社内容情報
当代一の影絵師・富右治に大店から持ち込まれた奇妙な依頼とは(「化物 燭」)。越してきた夫婦をめぐって、長屋連中はみな怖気を震うがその正体は?(「隣の小平次」)。名手が江戸の市井を舞台に描く、切なく儚い七つの大江戸奇譚集。
内容説明
当代一の影絵師・富右治に大店から持ち込まれた奇妙な依頼「化物〓燭」。長屋に越してきた若夫婦の男は幽霊だと恐れられるが…「隣の小平次」。付喪神が見える修繕屋の乙次は怪事件に巻き込まれる「夜番」。江戸の市井を舞台に、名手が描く七つの奇譚。
著者等紹介
木内昇[キウチノボリ]
1967年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』でデビュー。09年第2回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で第144回直木賞、14年『櫛挽道守』で第9回中央公論文芸賞、第27回柴田錬三郎賞、第8回親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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piro
41
江戸の奇譚7編。幽霊の類が多く出てきますが、怪談の様な怖さはなく、寂しくもほっと温かくなる話が殆ど。何かしらの心残りを遂げようとする彼岸の人、思いに寄り添う此岸の人。つれあい、親子、きょうだいなど、彼方此方の境界を越えて相手を思う気持ちがじんわり沁みる一冊でした。市井の人々の暮らしと人情が生き生きと描かれるのも木内作品の魅力。幾つかの作品で描かれる職人気質も江戸らしくて良いなぁ。『蛼橋』、『お柄杓』が特に良かったです。唯一『幼馴染』だけは怖さを感じた作品。結局生身の人間が一番怖いということか…。2023/01/21
エドワード
37
江戸の長屋でつましく暮らす人々が出会う不思議。大切な人を亡くした者の、悲しみを心に秘めた静かな日々。密かに慕う兄嫁を亡くした宗次郎。妻と娘を亡くした絵師の窪幾英。生まれ変わった妻を一目見たさに、時をかける孫六。妹の姿を見守る、正真の幽霊・平蔵。幼馴染みの残酷さを描く掌編が怖い。標題作はその名の印象ほど怖くない。むしろ親子の機微が心にしみる。舞台となる豆腐屋、漆屋、和菓子屋、油問屋などの細やかな描写、江戸言葉の歯切れ良さ。蝋燭の炎。下駄の鼻緒。姉様絵。随所に描かれる江戸の情緒。得も言われぬ美しさを感じる。2022/07/04
Y.yamabuki
26
怖いのは苦手だけれど、これは丁度いい塩梅。むしろこの世の人間の方が怖かった。この世に姿を現すのは、何かしら、訳が有ってのこと。それらは、温かかったり、切なかったり、悲しいけれど優しかったり。章立ての妙で、しんみりした後にほっと出来る温かい話で一息付く。江戸っ子らしい歯切れの良い台詞まわしと軽妙な文章が心地好い。2022/08/23
のぼる
21
直木賞作品『漂砂のうたう』を、積読から出しては戻しの6年、その間3冊目の木内さん。幽霊が出てくるが、怖かったのは人間だった。木内さんの文章は、さらさら流れるようで、そして味わい深い。今度こそ、積読本を読む、か? どうも、木内さんの短編が好きなようにも思う。 2022/06/17
イシカミハサミ
16
江戸時代を舞台にした たしかに「いる」短編集。 表題作の「化物蝋燭」がいちばん端的だけれど、 人の思いにこの世だけでは説明できないような出来事が合わさって 物語が深まっていく。 どの短編も読みやすくて面白かったのだけれど、 特に「幼馴染み」「むらさき」は出色。2022/10/07