出版社内容情報
【文学/日本文学小説】小説、映画ともに話題となった不朽の名作。保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。凶行に及んだ彼と出会ったもう一人の女。なぜ事件は起きたのか。なぜ二人は逃げ続けるのか。そして、悪人とは誰なのか。毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した著者の代表作。
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かぷち
88
言葉のやり取りは無意味で、刹那の快楽を貪り合う。どんなに交わっても満たされることは決して無く空虚。そんな世界で、理屈抜きにこの人だと思える相手と巡り会える確率はどれくらいだろう。狂おしい程相手を求める愛情は、自分を傷付ける憎悪と表裏一体、諸刃の剣。相反する感情の狭間で揺れ動き、時にボロボロになりながら。そんな一方通行の筈だった想いがたとえ一瞬でも相互通行になったなら、生を実感できるのだろうか。ならば愚かであることが悪だとしても、進んで愚か者に、悪人になるだろう。2024/02/08
のり
88
殺人はもちろん悪であるが、その過程にもう一人悪意をもった者がいた。吹聴する醜さ、勘違いの立ち振舞い。罰せられないが間違いなく悪党である。被害者は命を落としたから可哀想ではあるが、全面的に同情する事も出来ない。同情すべきは娘を信じる両親だ。犯人も自首する機会が幾度もあったに関わらず逃亡の道を選んだが、最後の強硬は彼女の為だと心底願いたい。2019/12/28
優希
86
殺害の捜査戦に浮かぶ男、彼と出会った女。事件は何故起き、2人は何故逃げるのか、「悪人」とは誰かを考えさせられました。誰だったのか特定していないことで、読者に委ねたのだと思いました。殺人という悪は確かに存在しますが、行為のみならないのではないでしょうか。殺人犯が悪人と直接結びつくわけではないと考えさせられました。2019/06/05
kei302
68
「悪人」になることで、光代を世間から守った祐一、生い立ちを含めて全てが悲しすぎる。佳乃の父、祐一の祖母が自分の子(孫)を思う気持ちに打ちのめされた。新聞連載で読んで満足したまま15年経過。最後の部分は新聞連載にはなかったと思う。母親にお金をたかり、そうすれば、自分を捨てたという加害者意識から、捨てられた自分と同じ被害者になれる。この思考が悪人に繋がってしまったのか…。2022/01/30
はにこ
63
このタイトルが言う、悪人とはいったい誰なんだ。そりゃ殺されて良い人なんて居ないんだけど、佳乃は苦手、いや嫌悪感を抱いてしまう。また、増尾や健康食品会社の輩にも同様の気持ちを抱く。祐一がもし光代にしか出会っていなければ幸せになれただろうか。そんなことも考えてしまう。事件の被害者、加害者いずれの家族も可哀想だった。バスの運転手の言葉だけが唯一の救いに思えた。2023/06/16
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