出版社内容情報
幼くして生き別れたおぼろげな記憶の中の父親が「在日」だったと知って、朋美は衝撃を受ける。なぜ自分に今まで黙っていたのか。そして母親が秘めていた、海峡をまたいだ物語とは。「愛せない自分」と向き合う女性を描く、著者渾身の感動作。
内容説明
幼少のみぎりに生き別れた父親を理想化し、朋美は誇らしく思っていた。ところが母親が選挙に出た際に「夫は北朝鮮の工作員ではないか」と報道され、朋美は衝撃を受ける。父親はいったい何者なのか―。母子二代、血をめぐる魂の彷徨を描く、感動の物語。
著者等紹介
深沢潮[フカザワウシオ]
東京都生まれ。上智大学文学部卒業。会社勤務・日本語講師などを経て2012年、在日の世界でお見合いを取りしきりながら生きる女性を描いた「金江のおばさん」で第11回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、同作を収録した『ハンサラン 愛する人びと』(文庫化に際し『縁を結うひと』と改題)が話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みなみ
10
Kindle Unlimited に入っていたので……実業家の母を持つ朋美。父が在日朝鮮人だったことがわかり、朋美は母と父を嫌悪する。過去が交錯して明かされていく家族の物語。父と母の出会いとは。行方不明の父の正体は?母の清子とうまくいかない朋美。朋美の内面は差別意識が非常に強い。生まれの複雑さはあるが全然いい人ではない。主人公というと差別に負けずがんばっているみたいなパターンがあるが、それは友人のユリで、主人公はユリにも嫉妬と差別意識を持っている。でもこの生々しさこそが真実味を加えているのだろう。2023/12/03
二人娘の父
8
深沢さんの作品は3冊目。一貫して在日韓国人がテーマだ。しかしその描き方には変化もあるのかと感じた作品でもある。多分、新作からさかのぼって読んでいるので、そうした変化を感じるのかもしれない。本作は私の出身地である、川崎区もたくさん登場する。常に私のそばにいた彼ら/彼女らのことを思い出しながら読んだ。2022/05/13
平坂裕子
3
「ミアネ、クレド、サランへ」この言葉が包み込む愛情の深さに、胸が締め付けられた。最期にどうしてと娘だと名乗れなかった朋美、ゴーフル缶ふたつ大切にして欲しい。2018/07/28
yurara
2
生まれ落ちた環境がその後の人生に与える影響の大きさと、韓国人に対するひどい差別が1960年頃でさえあったことを突きつけられた気がする。世の中にある差別で自分で自覚できていないことはいろいろあるのだろうと思わされた。2022/06/14
mustache
2
深沢潮作品の三冊目。ぐんぐん引き込まれた。文世光事件と引っ掛けて、主人公朋子の父が失踪した背景が明かされる。朋子が整形手術の予約をしながら、思いとどまるエピソードがなかなか効いている。著者にとって韓国の血筋を引く意味がいかに大きいかを、『緑と赤』『海を抱いて月に眠る』そして本作を読んで感じる。2019/10/18
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