出版社内容情報
獅子文六ブーム再燃中! 納富家で隠居生活をおくるおばあさんのもとに、娘婿の浮気に孫娘の婚約騒ぎと心配の種が次々に舞い込む。人生の荒波をくぐり年を重ねた女性の知恵と気骨としたたかさで、おばあさんは厄介事の解決に奔走する。ユーモアあふれる家族小説。
内容説明
孫娘の婚約騒ぎ、娘婿の浮気、演劇に傾倒する末息子。隠居中でもおばあさんの悩みはつきないが、人生の荒波をくぐりぬけた、明治生まれの女性の知恵と気骨としたたかさで家族の厄介事の解決に奔走する。昭和初頭の家族をユーモア満点に描いた痛快小説。
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893年、神奈川県生まれ。小説家・劇作家・演出家。慶応義塾大学文科予科を中退後、フランスへ渡り演劇理論を学ぶ。日本へ帰国後、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を立ち上げ、演劇の振興に力をそそいだ。一方、獅子文六の筆名で執筆活動をはじめ、1934年に文芸誌『新青年』に掲載された『金色青春譜』でデビュー。69年に逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
61
万事恙無く「家」を取り仕切っていくおばあさんの話。息子、嫁、孫、婿、大変な問題児がいるわけではないけれど、人数が多い分、少なからずとも頭を悩ませる問題はいつでも起こってくる。それを知恵と経験とでもって時に厳しく、時に優しく回りとの調和を持って解決していくおばあさん。いつだっておばあさんは自分のことではなく「家」の行く末を一番に考えている。昨今、自分の幸せ利益を考える人間が多い世の中にあって、自己はさておき、長い目で見て将来を考え動ける人間の物語はある意味新しい。おばあさんのような大きな人に、私はなりたい。2017/08/15
to boy
33
昭和16年の世相がよくわかる小説。日清日露戦争を経験してきたおばあさんが子供、孫のいざこざを見事に解決して家系を守っていくすっきり爽快な内容です。立上のじいさんとのやりとりが面白くて思わず笑えてしまいました。亡き夫の23回忌を無事に終わらせることができ、三男の生活も筋道ができてほんとに幸せな人生だったんだなぁって心が温まりました。市井の明るい家庭が描かれていて人間っていいなぁって思える一冊です。2017/08/30
ヨーイチ
31
時間が掛かったけど、普通なら一気読みの面白さ。本作と「信子」を併せてNHKの朝連ドラ化されている。『おばあさん』『主婦之友』1942年2月-1944年5月(wiki)真珠湾攻撃が1941・12・8。敗戦はご存知1945・8・15。戦前ならば国策小説、戦後ならば戦時下で軍国主義迎合小説とかのレッテルが貼られていたに違いない。流石の文六先生も日用品が配給制になり健全な市民生活が毀損されていく現実には苦労したのではないか。「物資の欠乏がそれほどでもなかった」とか言い訳めいた文言が見える続く2017/11/18
kokada_jnet
26
旧角川文庫版で読了。非常に面白い小説だけれど。太平洋戦中に連載され、戦争開始する前の1年間を描いているという設定だけは、好きになれない。主人公の「おばあさん」と読者だけが、「日米戦争が始まること」を知っていて、他の登場人物たちは「戦争なんかおきないでしょう」と馬鹿みたいに見せる構図が嫌だ。孫娘が通う栄養学校が、「栄養学で、女性も国に貢献するのです」とのアピールが激しすぎると思ったが、考えてみるとこの作品は「主婦之友」誌に連載されたのだ。2017/11/29
みゆき
18
軽妙でリズム感ある筆致に惹き込まれる。このおばあさん、69歳で元はインテリ家庭のお嬢様。伯爵家の家令に嫁ぎ、4人の子と6人の孫に恵まれる。そろそろ隠居を決め込もうと思ってはいるが、自ら新しいお荷物(家族の心配事)を背負ってしまうのだ。どこの家庭でもなさそうでありそうな問題を、悲壮感なくユーモラスに描く。セレブ一族なのに嫌味がないのも作者の持ち味なのだろう。各々の強烈な個性のぶつかり合いも楽しい。昭和初期の話ではあるけれど、今でも色褪せない名作。こんなおばあさんになりたい。2022/07/24