内容説明
ドナルド・キーン氏の退官記念の講演のため再訪したニューヨーク。日本人も忘れてしまった日本を「発見」した研究者たちとの触れ合いが楽しい。ブルックリン橋のたもとで「アメリカ文明」の勃興を思い、世界中からの移民を呑み込んで膨れあがるマンハッタンを歩きつつ「アメリカのおもしろさは、変化である」と言い切る。同国の歴史を変えた「9・11」に先立つこと約9年の旅だった。
目次
マンハッタン考古学
平川英二氏の二十二年
ブルックリン橋
橋をわたりつつ
ウィリアムズバーグの街角
ハリスの墓
コロンビア大学
ドナルド・キーン教授
角田柳作先生
御伽草子
ハドソン川のほとり
学風
日本語
奈良絵本
ホテルと漱石山房
さまざまな人達
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
109
1992年コロンビア大学日本学の世界的な権威ドナルド・キーン教授の退官のお祝いに講演目的でニューヨークを訪れた。そこで会った人、その人と関連した人、ニューヨークという土地など、余談に次ぐ余談の雑感集。マンハッタン島は、イーストリバーとハドソン川に挟まれた堅い岩盤から成り、またハドソン川は遠くカナダのモントリオールから流れる雄大な川である。マンハッタンの北端には、ニュージャージーとの間にジョージ・ワシントン橋、ブルックリンとの間にブルックリン橋と19世紀に潜函工法で建てられた。日本は江戸時代だった頃のこと。2023/09/26
かず
28
故ドナルド=キーン博士の退官記念講演に訪問した機会をまとめたもの。キーン博士やその周辺の日本学研究者に多くの紙面を割いている。私が心に留まったのは、①アイルランド人による激烈な黒人への迫害。自らも英国に長く隷属し、苦しい立場に置かれていたにも関わらず、新天地でさらに下の立場をリンチする。敬意を受けなかった人間は、他者に同じことをする。他者に愛敬を。②ユダヤ人についての考察。長く嫌われ者であったユダヤ人についての考察。③ブルックリン橋架橋の逸話。土木業界に身を置いているので(事務職だが)、興味深く読めた。2019/07/29
金吾
27
他の街道シリーズよりボリュームは少ないように感じましたが、コロンビア大学の日本文学研究の話(量的にもメインと感じます)は面白かったです。2022/04/13
yokmin
25
92年、私は企業のNY駐在員だった。東京本社の先輩より「司馬さんと新潮社の編集者(複数)が訪問されるので、必要に応じてアシストして欲しい」と。 編集者(女性)からは、本書p-161に書かれているように、日米経済摩擦で微妙な時期なので、司馬さんの講演のテーマを変えるとの話。 コロンビア大学で催された講演会には私も参加した。「日本仏教小論」がテーマであった。 編集者から「これは司馬さんからの贈り物です」とサイン入り本「明治という国家」を頂いた。今でも大事にとってある。2024/07/14
紫羊
17
他の巻とは少し趣が違う。散歩というのが相応しい淡白さに戸惑った。その代わりにといっていいのか、ドナルド・キーンさんを中心に据えて日本文化についての考察に多くのページが割かれている。古典が読みたくなった。2022/04/10
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