内容説明
「私はどうにも近江が好きである」―「湖西のみち」(第1巻)以来の「近江散歩」。江戸時代と変わらずたたずむもぐさ店や銃砲店に驚き、一方で景観や湖水を我が物顔に侵す乱開発を憤る。「奈良散歩」では春浅い東大寺に千年以上の伝統を持つ修二会(お水取り)の行事を訪ねる。「この世には移ろわぬものがあるという安堵感」を説くくだりは、「文明」と「文化」の違いを考えさせて、深い。
目次
近江散歩(近江の人;寝物語の里;伊吹のもぐさ;彦根へ;金阿弥;御家中;浅井長政の記;塗料をぬった伊吹山;姉川の岸;近江衆;国友鍛治;安土城跡と琵琶湖;ケケス;浜の真砂)
奈良散歩(歌・絵・多武峯;二月堂界隈;五重塔;阿修羅;雑華の飾り;光耀の仏;異国のひとびと;雑司町界隈;修二会;東大寺椿;過去帳;兜率天)
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
90
司馬さんは近江が好きらしい。琵琶湖の大開発事業計画に対しての大きな憤りが伝わってくる。これが書かれたのはもうだいぶ前だけれど、今も琵琶湖の自然はちゃんと守られているのだろうか?思いがけず濱田庄司さんやリーチの話が出て来て嬉しかった。姉川の合戦の場面はもう小説を読んでいるよう。奈良は興福寺と東大寺について。特に修二会の様子に紙面を割く。東大寺は拝金主義とも無縁で、千年も続く伝統を守っている事は素晴らしい事だと思う。最後の一文「たしかに、東大寺には、兜率天がある。」を読んで、なぜか涙がこぼれた。2020/02/23
Book & Travel
41
こちらも彦根出張に合わせ9年振りの再読(初読は旧版で登録)。近江散歩は、美濃国境の寝物語の里から彦根、姉川、国友、安土城へ。井伊直政・直孝親子や浅井長政と、優れた人物ながら小説等では脇役になりがちな人物の生涯が掘り下げられ、とても興味深い。優美な彦根城は司馬さんにも絶賛されている。奈良散歩は興福寺と東大寺。東大寺に伝わった華厳の成立・伝来の歴史を鮮やかな国際的色彩と供に迫る辺りは、圧巻の読み応え。千年以上続く修二会は一度見てみたいものだ。街道シリーズの中でも、特に筆致がいきいきしている様に感じられる巻だ。2024/04/25
no.ma
24
まるで歴史小説のように「街道をゆく」も読ませてくれます。特に「奈良散歩」は、あの名調子でぐいぐいと引き込まれます。華厳の思想、明治の神仏分離と興福寺の受難、そして千年以上変わらない二月堂の修二会。教科書にない歴史が覚えようとしなくてもするする頭に入ります。司馬遼太郎のいう兜率天がある東大寺に行ってみたくなりました。なぜ今まで読んでいなかったのか悔やまれますが、これから気になる街道を読む楽しみもできました。2023/08/16
Shoji
24
「奈良散歩」を読みたくて手に取りました。 奈良ツウの人には、ぐっと引き込まれる含蓄のある深いぃお話。 奈良ビギナーの人にも、奈良へ行ったらちょっとお披露目したくなる「へぇ」的ウンチク話。 もちろん、「近江散歩」も楽しく読めました。2015/11/10
aponchan
22
日経新聞リーダーの本棚で2018.12本願寺派総長が取り上げていたことをきっかけに読了。奈良は馴染みがあるが近江はなかなかピンと来ない部分が多かったので、色々な角度から成り立ちや歴史的背景等を知ることができて良かった。 近江商人という言葉は、この本を読んで腹落ちしました。2019/09/02