内容説明
時は明治末。地球空洞説を信奉する科学者とその娘が行方不明に。挿絵画家・野々村、女中・サトら素人探検隊はついに地底旅行へと出発した。光る猫、地下に生息する恐竜など奇想天外の物語と漱石の文体をふまえた軽妙な語り口。『地底旅行』を超えるファンタジー小説。
著者等紹介
奥泉光[オクイズミヒカル]
1956年山形県生まれ。作家。近畿大学教授。93年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、94年『石の来歴』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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goro@the_booby
42
奥泉光好きだわ~。樹海に飛び込む富永探検隊の丙三郎隊長は大言壮語で知ったかぶり、行方不明になった稲峰博士父娘を探す名分はあるが実は武田の隠し財宝が目当て。語り部となる画工と学者鶏月、稲峰家の女中サトを従えて地底探検。読みながらクスクス笑いが思わず漏れる。漱石の文体を借りて波乱万丈。仕方なく連れて行ったサトがいなけりゃどうなっていたことか。憎み切れない丙三郎が主人公かもしれない面白さ。地底は波乱万丈でございました。2025/05/13
てふてふこ
17
明治42年、富士山麓から地底旅行する冒険小説。宇宙オルガン再登場。暗闇・追い剥ぎ・恐竜・電気など、不安要素が次々襲い掛かるが、兎に角笑える。軽薄で饒舌な丙三郎、しっかり者のサトといった登場人物も魅力的。文章力の高さは流石です。しばらくは常に手元に置いていたい。自分の笑いのツボ。大好きな本です。続編読みたい!2014/03/23
miroku
10
へタレの主人公と口先だけの隊長と、知的隊員&有能な17歳のお手伝いさん・・・。大丈夫か、この探検隊!?2011/08/20
gu
9
『鳥類学者のファンタジア』とも共通するネタはあるけどだいたいは『「吾輩は猫である」殺人事件』の続編。『吾輩~』と同様に漱石の文体で、あちらは探偵小説、こちらは冒険小説というジャンルの違いはあれど二重にパロディをかましてなおかつストーリーのベタな面白さとユーモラスな語りがあるのが強い。今度も元ネタを突き抜けて宇宙規模の壮大なSFに辿り着く。終盤、語り手の小市民性はそのままに語られる景色は地上を遠く離れている。本領発揮と言わんばかりに生き生きと。幻想と諧謔の人だと思う。2016/05/29
しゅんろ
8
面白い!舞台が明治時代だからといって、文体までその時代に合わせてしまう奥泉光が凄すぎる。この人の小説はぶっ飛んだ内容が多くて好き嫌いがはっきりわかれるだろうけど、文章がは軽やかでほんと文字を追うのが頗る楽しい。登場人物がみな生き生きしていて続編を読みたくなる。2011/07/09