内容説明
なぜ子供は学校に行かなくてはいけない?子供たちの素朴な疑問に、ノーベル賞作家はやさしく、深く、思い出もこめて答える。16のメッセージと32点のカラーイラストが美しくひびきあい、心にとどまる感動のエッセイ。「子供も『難しい言葉』を自分のものにする」を新たに加えた待望の文庫版登場。
目次
なぜ子供は学校に行かねばならないのか
どうして生きてきたのですか?
森でアザラシと暮らす子供
どんな人になりたかったか?
「言葉」を書き写す
子供の戦い方
シンガポールのゴムマリ
ある中学校での授業
私の勉強のやり方
人の流れる日
著者等紹介
大江健三郎[オオエケンザブロウ]
1935年愛媛県生まれ。東京大学仏文科卒。大学在学中の58年「飼育」で芥川賞受賞。以降現在まで常に現代小説をリードし続け、数多くの賞を受賞。94年にはノーベル文学賞を受賞する。『万延元年のフットボール』(谷崎潤一郎賞)『洪水はわが魂に及び』(野間文芸賞)『「雨の木」を聴く女たち』(読売文学賞)『新しい人よ眼ざめよ』(大仏次郎賞)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン
18
数学の見方が変わりました。2019/11/15
ちぇけら
18
難しいことも、よく考えてみてほしい。そんな願いが(なるべく)平易なことばで書かれている。こどもの視点を振り返ってつむがれたことばたちは透き通っていて生きた匂いがする。人を殺さないこと、自殺しないこと、それだけは心にとめておいてほしいという強い思いを感じた。2019/02/20
桜もち 太郎
17
子供向けに書かれた作品であるが、十分に大人向けだった。戦争が終わり、大江さんが学校に行かなくなった理由に納得。戦時下において天皇は「神」だ、鬼畜米兵だと教えこまれ、終戦を境に天皇が人間となり、アメリカは友達だとの掌返しに、教育に対する不信があったのだろう。父親の影響も大きかったんだろうな。「うわさ」への抵抗力も身に染みた。ナチスドイツが行ったユダヤ人大量虐殺しかり、少しの噂から大きな差別迫害に繋がる恐ろしさ。「アンネの日記」を出した出版社が、ガス室はなかったという記事を出した、日本のマスコミの愚かさ。→2023/03/21
nonicchi
15
大江先生の本は全く歯が立たないが、これなら読める!と思った本書は、大江先生曰く「一生懸命、小学生に向けて書きました。」と語ってらしたと伊集院光さんがおっしゃっていたのを聞き、読んでみることに。「万延元年のフットボール」と「水死」を没後に立て続けに読破。この本はなるほど読みやすい文章ですが、「大江健三郎」のエッセンスが十二分にぎっしり詰まっている本だと思います。本と、それを読む自分にとってジャストミートの時があると。さすれば、今の私はようやく大江作品が読める時が来たのだな。還暦目前だけど(笑)。2023/06/05
ぷるいち
15
最近どうも本を読むことが億劫になっていたけれど、大江健三郎の言葉を借りて言うなら、その状態から「恢復」させてくれた本だった。子供に向けた本ということで、いつもの清濁が混ざりこむあの「うねり」がなくて、文章の感じは、冬晴れの朝の光のような、透徹としているけれど温かみもあるような感じ。僕も大江健三郎のように括弧に入れてものを考えるようにしよう、自分のなかの人間を大切にしよう、と思った。2017/04/20