内容説明
30歳、定職、彼氏なしの桃子と、荻窪の実家から紅梅荘に戻ってきた親友の花子。小説家のおばさんは相変わらず辛辣で、隣人の岡崎さんは、どこか謎めいた人。諧謔と風刺にみちた言辞を、この上なく楽しい小説世界に描く、『小春日和』から10年を経た「彼女(たち)」の物語。
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年、群馬県高崎市生まれ。高崎女子高校卒。67年、『愛の生活』で小説家デビュー
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
74
『小春日和』の十年後、相も変わらず目白の紅梅荘に住む桃子と、花子と小説家のおばさんの日常を綴ったものだが、表題からも明らかなように彼らの会話と関心の端々にはゴダールなんかも鏤められ、あるいはフローベールでも『ボヴァリー夫人』ではなくて、ちょっとネエチャン騙しの『感情教育』だったりと、彼らに言わせれば「プチブル教養主義」的な、いたって「閉じられた」小説世界が展開する。彼らの周辺を含めた世間話につきあっているようでもあるのだが、これが何とも面白くて、時々は釣り込まれて笑ってしまったりもするのだった。2013/11/16
sasa-kuma
14
「小春日和」の10年後のはなし。桃子も花子も叔母さんも健在。この面白さってなんなんだろう。3人の周辺の決して広くはない(というより極めて狭い)世界の中で起こる日常的出来事。それがこんなに面白いなんて、本当に不思議だ。短文、複文、重文がずらずらと連なり何が誰が主語なのかふとわからなくなったりするのだけれど、ちゃんと句点で着地。人の呼び方を誰に合わせて変えるかも興味深かった。日本語ならではの機転というか文章だなぁ。2014/05/20
rinakko
7
再読。──“そこに夢見るものなんか、何もないけれど”。『小春日和(インディアン・サマー)』からほぼ10年後の、桃子、花子、小説家のおばさんたちを描いた姉妹作。少し本整理をしようとして目に留まり、懐かしさについ読み耽ってしまった。(フローベール『紋切型辞典』が出てくるとにやにやしてしまう)2024/04/10
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6
丹生谷貴志の解説がとても良い。「……という訳で(?)、『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』はカタリー派の日常の「歌う苦悩」の再現となる訳である」!2017/12/10
うさこ
6
小春日和の続編。相変わらず面白かった。2011/02/12