内容説明
日本の現状に強い危機感を抱く司馬遼太郎が、土地問題、国際化、精神風土、文明と自然、異国などをテーマに6人の論客と語り合う。独自の史観をあますところなく披瀝、過去から未来への示唆に満ちた貴重な発言録。死去直前に行われた田中直毅氏、ロナルド・トビ氏との対談を含む。
目次
日本人への遺言(田中直毅)
日本人、そして世界はどこへゆくのか(宮崎駿)
日本の選択(大前研一)
さいはての歴史と心(榎本守恵)
琵琶湖を語る(武村正義)
異国と鎖国(ロナルド・トビ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
48
中古本でフト手にした一冊。このままではこの国は滅びるという想いの司馬氏末期の頃の対談集。6人の識者との対談が収録されているが、僕には武村正義氏の対談が一番興味深かった。琵琶湖の歴史からの内容が興味を惹いたから。さて、我が国固有の考えとして2つ述べられていると整理した。1つは土地の私有地化に伴う加害者という考え。もう一つは、日本人の単一性から来る集団ヒステリー的な考え。土地については些かこの時代めいたところもある。この2つが国が滅びるという主張迄に結ばれる対談や論はこの本にはない。宿題ということなのか。2019/04/30
優希
40
歴史から現代を憂いているのが感じ取れます。未来への道標に憂いの歴史を描かなくて良いようにしたいですね。2022/05/04
佐島楓
29
宮崎駿さんとの対談が読みたくて購入させていただいたのだが、ロナルド・トビ氏との差別の問題についてのお話も脈々と続く事柄として読むことができてよかった。日本人はこのままでは滅びる、と危惧なさっていらした司馬さんのお気持ちが理解できるようになってしまった、それが悲しい。2013/09/09
高橋 橘苑
21
若い頃、おおいに知的好奇心を満足させてくれた司馬遼の対談集だが、田中直毅、宮崎駿、大前研一、武村正義等の対談相手の名前を見て正直なところ期待はしていなかった。しかし、良かった。殊に表題でもある田中直毅との対談「日本人への遺言」は司馬遼死去の直前であり、前年の阪神大震災・オウム真理教事件と物情騒然とした時代背景もあり、司馬さんの日本及び日本人への絶望と怒りを率直に感じとることが出来る。バブルの反省を、戦争で負けたあの事態よりもっと深刻であると言い、もう次の時代は来ないとまで語る遺言に、真剣に耳を傾けたい。2015/02/26
とよぽん
20
司馬遼太郎さんの晩年の対談6編が収められている。「各界の第一人者と語り合った」とオビにあるが、女性は一人もいないことが残念だった。それはともかく、「日本人への遺言」という恐ろしいタイトル通り、このままでは日本は滅びると何度も書かれていて、この国の(20年前の初版だが)存亡を脅かす病根に多角的に切り込む対談だった。司馬さんは2016年の今の日本を、あの世からどう見ているだろう。何か言ってほしいけれど・・・。2016/09/18