感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
119
最近私が一番気に入っている作家、南木佳士のエッセイ集。小説では分からないこの作家の胸の内が明かされており、興味深い内容だった。小説は小さな説であり、書く者の視点はできるだけ低くしなければならない、という言葉が何度か出てくる。この言葉が一番心に残った。だから南木さんの小説は、地に足の着いたものになっているのだろう。視点を低くする姿勢は、病気のために死んでいく患者さんの気持ちに寄り添おうとしたことからも、来ているのかもしれない。改めて作家としてだけではなく、人間としても尊敬できる人物だと思った。2016/09/05
piro
33
エッセイとエッセイのような短編集。静かな語り口の中に、南木さんの確固とした想いが滲み出る様な作品でした。常に死が身近にある医療の現場。患者に真剣に向き合う程、正常な神経を保つことは難しいのでしょう。南木さんの文章が心に響くのは、嘘がない正直な言葉だからなのだと思います。「会社というのは多分におとぎ話的要素を含んだ組織なのだが、その中で人間であり続けることが真に生きているということなのだと思う。」『新入社員に贈る言葉』はかつての新入社員の肚にストンと落ちました。2022/09/15
みつちや
5
入院病棟の休憩室で見つけた芥川賞作家のエッセイ本です。古く感じる所もありますが、文章は読みやすく優しい。癌と戦うのが正義とされた時代に医者になった著者。人間の尊厳と医療現場との乖離で、悩み傷つきウツになりながらも死生観を念頭に患者と向き合っておられます。名医で父の主治医でもある先生が読まれて書庫に置いたと思いたいですね。2020/07/10
momozy
3
芥川賞作家南木佳士のエッセイと短編、掌編集。作家であり、医者である著者の仕事に対する思いや死生観、それにまつわる生活などが記されている。特に医者としての心構えや死生観に関してはやはりプロなんだなと思わせられた。人はいつか死ぬ。どうしてかみんなが忘れてしまったことを思い出させてくれるそんな一冊。2011/01/13
頭痛い子
1
今まで読んできたエッセイと被るところはあるが、やはり好き。大好き。とくに医師になって間もない頃、一時は生命やばいかと思われた肺炎を患った老婆が、病気の数値が良くなってきてるにも関わらず『今夜が山場な気がするので家族を呼んでくれませんか?』のエピソードが好き。あとは昨今、医師と小説家の二足の草鞋を履いた者が多くなってきたが、その作家らに対して『自身の健全さを守りながら、綺麗事を口にしたり書いたりする医者を、私は信じない』と釘をさす姿勢も好きです(p144)2024/09/07
-
- 和書
- 江戸幕府の御家人