内容説明
崩岸の上に駒を繋ぎて危ほかと人妻児ろを息に我がする―人妻を恋する若者の切なさ、崩れそうな崖道に馬をつないでいる心地の危うさ、息をとめようとすれば生命を失うほかない、命がけの恋なのだ…苦悩や悲哀、寂しさや切なさの連鎖であった著者の人生の折折のことを綴った珠玉のエッセイ。
目次
母を裏切ったこと
お弁当は?
高知江の口町
ほととぎす
生きてきた道
若い日の私
木枯しの季節
共通語の残酷さ
ふるさとずいひつ
日向というところ
晩春愁想
四国山脈の秋
春立つ
初午の団子〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピンガペンギン
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野中婉の生涯を描いた「婉という女」が代表作である大原富枝(1912~2000)のエッセイ集。各雑誌や新聞に掲載された短文が多いがどれも美しい文章で心をこめて書かれたものだと思った。特に印象的だったのは「ある「『通信中隊誌』のこと」で、大原さんの旧友がビルマで修羅場をくぐった時の手記を付けていたところ、オーストラリア人の牧師さんにそれが拾われて英訳されて出版されたというエピソード。そして永井荷風の作品を愛読されていたこと、作品が各国語に翻訳された(中国語、ロシア語、英語)後の翻訳者との交流の話なども。2025/06/15




