出版社内容情報
ある日、著者のもとに植物学者から共同研究への誘いの手紙が届いた。全国の巨樹イチョウを調べているが、中国・朝鮮半島から日本に渡来した時期を科学的な根拠によって明かしたい、歴史研究者のあなたの協力を得たい、という。
植物学者の圧倒的な熱意に衝き動かされた著者は、ここからイチョウの史料調査に正面から取り組む。記録、古文書などイチョウに関するあらゆる文献を求めて全国を歩くなか、ある郷土史家が残した一冊の本に出会う。
そこには江戸中期、将軍吉宗が引き起こした美作国・菩提寺のイチョウにまつわる村の大事件が記されていた。イチョウ関係でこれほどの古文書は世界を探しても他にないだろう。それはどんなイチョウか。また稀有な資料を書き写した郷土史家とは。歴史研究者が綴るあくなき史料探求の道。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
55
全国に残るイチョウの巨樹について、人々の寄せる思いや歴史について徹底して調査されている。吾輩も巨樹は観たことがないが、中学や高校時代、授業中、窓外のイチョウ並木に見惚れた思い出がある。 文献を含め残された史料は少ない。そんな中、「記録、古文書などイチョウに関するあらゆる文献を求めて全国を歩くなか、ある郷土史家が残した一冊の本に出会う。」その本について語るのが本書のトピックで、なんとかの吉宗が登場する。彼が気になったのは、「垂乳根イチョウ」。吾輩も、本書で初めて「垂乳根」を知った。2025/07/21
Go Extreme
3
植物の進化史におけるミッシングリンク 幹周700センチメートル以上の巨樹 徹底した季節を追った現地調査 時間と根気と集中力が必要な学問 本草として渡来したイチョウ チチ信仰と呼ばれる気根への信仰 木にも格式があった民間信仰 植物の進化の歴史を埋める大発見 菩提寺古今録という貴重な史料 念仏行者による地域への影響 郷土愛から生まれた歴史保全の使命 趣味としての郷土史研究の価値 村の古老たちから聞いた話の記録 天然記念物保存と文化的向上 一本の木の伝記を編む作業 文字史料を通じて人々の思いに触れる2025/05/10
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