出版社内容情報
「果穂、おまえはどっちについて行く?」――家族というこの船には穴が開いてしまった。海水が流れこみ、もうじき沈むのだ。(「沈みかけの船より、愛をこめて」より)破綻しかけた家庭の中で、親を選択することを強いられる子どもたちの受難と驚くべき結末を描いた表題作ほか、「時間跳躍機構」を用いて時間軸移動をくり返す驚愕の物語「地球に磔(はりつけ)にされた男」など全11編、奇想と叙情、バラエティーにあふれた「ひとり」アンソロジー。
【目次】
内容説明
父の友人の遺品整理のため訪れた蔵で、俺は「時間跳躍機構」なるものを発見する。それからというもの、俺は無数に枝分かれした時間軸を渡り歩くことになった(「地球に磔にされた男」より)―奇想と叙情、バラエティにあふれた衝撃の“ひとり”アンソロジー。
著者等紹介
乙一[オツイチ]
1996年「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー
中田永一[ナカタエイイチ]
2005年「百瀬、こっちを向いて。」でデビュー
山白朝子[ヤマシロアサコ]
2005年「長い旅のはじまり」でデビュー。怪談専門誌『怪と幽』を中心に執筆
安達寛高[アダチヒロタカ]
1978年福岡県生まれ。2021年公開の映画『サマーゴースト』では脚本を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星野流人
25
乙一さんによる各名義を集めたアンソロジー。特に好きだったのは、わずか4ページの超短編「電話が逃げていく」。タイトル通りの内容でふざけてるのかと思うような導入なのだけれど、どんでん返しが見事で唸らされました。「パン、買ってこい」は、パシリになった主人公がまさかの方向へ突き進んでいく姿が良かったですね。良質な青春小説。表題作「沈みかけの船より、愛をこめて」も、沈みかけの船たる家族が、離婚にいたった原因が物語上に巧妙に仕掛けられていて、非常に良かったです。短い短編も多く、読みやすかったです2025/07/28
NAOAMI
9
乙一と彼の分身とでも呼ぼうか名義別に描かれた世界観はどれも独特だ。幻想?不思議?ファンタジー?SF?ミステリ?どの言葉も当てはまるが全てを言い得てない。掌編・短編で、視点人物は上手く人生渡っているわけもなく、どちらかというとネガティブ。なのに物語のトーンは決して暗くない。離婚する父母のどちらと共に暮らすかを悩んだり、カースト底辺でクラスメイトから遠巻きに敬遠されるも、冷静かつテンポよく健康的だ。何かがズバッと解決されるわけではないが各篇の終わりは清々しく爽やか。暗闇に差す光よりも薄明りに煌めく星に近い〆。2025/08/03
しましまこ
9
短編集、「パン、買ってこい」がお気に入り。2025/07/31
川端
5
★★★☆☆ サスペンスやSF、ミステリなどバラエティ豊かなひとりアンソロジー。山白朝子の『背景の人々』はありがちな怪談だが背筋をぞくりとさせるような恐怖感があった。2025/07/15