出版社内容情報
子供を捨て、女であることを捨てた天才琵琶師・鶴田錦史。実業界で名を馳せた後、武満徹作曲・小澤征爾指揮『ノヴェンバー・ステップス』の琵琶ソリストとして世界にその名を轟かせた彼女の壮絶な生涯を描くノンフィクション。
内容説明
「この一戦に命を賭ける」7歳で天才と謳われた鶴田錦史は「ノヴェンバー・ステップス」の初演を前に覚悟を決めた。この日のために女であることも幼い我が子をも捨てたのだ。琵琶に捧げた壮絶な人生を描く、第17回小学校ノンフィクション大賞優秀賞受賞作。
目次
第1章 ノヴェンバー・ステップス
第2章 天才女流琵琶師の誕生
第3章 美少女琵琶師の登場
第4章 熾烈な権力闘争の果て
第5章 輝ク部隊
第6章 事業家への転身
第7章 櫻玉から錦史へ
第8章 水の輪と霜月の段
第9章 散り果つるまで
著者等紹介
佐宮圭[サミヤケイ]
1964年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。「大人の科学マガジン」や「日経ビジネス」などでライターとして活躍。2010年『鶴田錦史伝―大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
49
知識なく、関心ない琵琶奏者の世界。音色しか頭にない。ノンフィクション大賞たる当作品は帯に並ぶほど煌めくものではないと思った・・が明治から平成中期にかけての「切り取った社会世相史」となっている。ヒロインはキクエと冨美。後半で述懐している両人の想いは無論、筆者の創作が大きい。暗黒の時間に向かって行った当該時代、オンナが辿った路程に家庭環境が多大に関与したのは明確な事実・・男、性的支配、搾取。。同じ「琵琶奏者」という道ながら彩の温度が大きく異なった。天才、男装、美人、、いつの時代もマスゴミが付ける冠は嫌悪感が。2024/12/02
Kano Ts
9
武満徹と彼の「ノヴェンバー・ステップス」が好きで、それに参加した琵琶奏者の鶴田錦史の名前は知っていた。だが、まさか女性だったとは!琵琶の戦前戦後の歴史を踏まえた、鶴田と水藤の2人の女性の人生は読んでいて壮絶だが面白かった。2人ともに芯を感じた。武満ファンとしてはもう少し「ノヴェンバー・ステップス」についての下りを掘り下げて読んでみたかった気もするが、そこは仕方ない部分もあるか。文章も巧みでノンフィクションとして面白かったです。2024/09/07
チェアー
7
鶴田の伝記でありながら、水藤錦嬢という人物を立ち上げたところにこの本の意義がある。そして読み終えたときには知らなかった琵琶の世界を多少なりとも知ることができたと思える。 2024/10/13
Tatsuo Ohtaka
4
武満徹「ノヴェンバー・ステップス」を尺八の横山勝也とともに初演した鶴田の生涯にスポットを当てた評伝。戦前の琵琶ブームについてや、これまでほとんど知られていなかった実業家時代など興味深い話が満載。勉強になります。2024/11/06
室田 尚子
3
武満徹「ノヴェンバー・ステップス」の初演者として知られる鶴田錦史の生涯を描いたノンフィクション。小学生の頃から琵琶で稼いでいた天才少女がなぜ男装の実業家となったのか。そして後半生で誰もしたことのない全く新しい琵琶音楽を切り拓いてく。時代や琵琶師という独特の世界の因習を背景に、女性として生きること、芸術家とは何かなどが書かれていてとても興味深かった。また同い年で「美少女天才琵琶師」と騒がれた水藤錦穣の生涯が対比的に綴られているのが作品に一層の奥行きを与えている。2024/08/17