出版社内容情報
アイヌ民族の愛すべき文化と、二風谷を舞台に著者の一族が経験した過酷な歴史……散逸するアイヌの民具蒐集に奔走し、また生涯アイヌの文化伝承に尽くした著者による半自伝的エッセイ。未文庫化の『イヨマンテの花矢 続・アイヌの碑』も収録した待望の復刻。
内容説明
「文字を持たなかったアイヌ民族の一人の男が日本語で書いたアイヌの碑といえる」。北海道二風谷を背景に、一族が背負った過酷な歴史から豊かな文化までを静かな筆致で記した名著。初文庫化となる『イヨマンテの花矢 続・アイヌの碑』も収録。
目次
アイヌの碑(わが二風谷;コタンの四季;和人の奴隷だった祖父;強制移住の果て;長期欠席児童 ほか)
イヨマンテの花矢―続・アイヌの碑(イヨマンテの花矢;二風谷小学校を残す;木彫りとの出会い;民具とともに五十年;ユカラとウウェペケレ ほか)
著者等紹介
萱野茂[カヤノシゲル]
1926年北海道沙流郡平取町二風谷生まれ。様々な職業に就きながらアイヌの民具、民話を収集し、72年に二風谷アイヌ文化資料館(現・萱野茂二風谷アイヌ資料館)を開設。その後もアイヌ民俗の文化伝承に努める。75年にアイヌ民話をまとめた『ウエペケレ集大成』で菊池寛賞。その後78年に北海道文化奨励賞、89年に吉川英治文化賞、93年に北海道文化賞、また98年には『萱野茂のアイヌ神話集成』で毎日出版文化賞を受賞。2006年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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JKD
7
貧しくとも豊かな自然と優しい人たちによって継がれていく北海道の先住人、アイヌ民族。このアイヌの血を引く著者の波瀾万丈な人生やアイヌ文化を守り抜くために奮闘する姿など、とても勉強になった。とくに和人から旧土人と呼ばれ、強制徴用や粗悪な土地への強制移住など侵略とも言える差別行為を克明に記した文書は当時の残酷さを強く物語っており、現代においてもなおこの黒歴史が問題視され続けるのも納得できました。2021/07/24
belier
6
アイヌ民族として生きた一人の男性が日本語で書いた自伝。幼少の頃、日本語を知らない祖母にかわいがられたため、1926年生まれにしてはアイヌ語が堪能な著者。家が貧しかったため、小学校を出てすぐ働きに出て苦労をするが、山の仕事で若くして親方となる。アイヌであることを若い頃は嫌っていたが、やがて民族意識に目覚め、アイヌの口承文芸や工芸を伝え広めること、権利の回復を求めることがライフワークとなった。国会議員にもなりアイヌ新法成立に尽力した。その並外れた人生を通して、アイヌ民族の豊かな文化と苦難の歴史を紹介している。2022/07/08