内容説明
18歳の美大生が交通事故で記憶喪失になる。それは自身のことだけでなく、食べる、眠るなどの感覚さえ分からなくなるという状態だった―。そんな彼が徐々に周囲を理解し「新しい自分」を生き始め、草木染職人として独立するまでを綴った手記。感動のノンフィクション!
目次
第1章 ここはどこ?ぼくはだれ?
第2章 これから何がはじまるのだろう
第3章 むかしのぼくを探しにいこう
第4章 仲間はずれにならないために
第5章 あの事故のことはもう口に出さない
第6章 ぼくらはみんな生きている
著者等紹介
坪倉優介[ツボクラユウスケ]
1970年大阪府生まれ。草木染作家。大阪芸術大学芸術学部卒。89年交通事故で記憶喪失になる。94年京都の染工房「夢祐斎」入社、染師・奥田祐斎に師事する。2001年草木染作家としてデビュー、マスコミで話題となる。04年独立し、世界中を旅しながら新しい染色技術を研究する。05年「優介工房」を設立。記憶喪失を乗り越えた体験を語り、命の大切さを伝える講演を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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ふう
114
比較的穏やかに書かれていますが、実際にはもっと困難で大変な時間だったのでしょう。人をつくっているものはいろいろありますが、記憶が無くなるというのはこんなに怖ろしいことなのかと、認知症とは違う怖さを感じました。思い出が無くなるだけでなく、知識や常識まで失われてしまう場合もあるのですね。本人の努力はもちろんですが、家族や周囲の愛情や努力なしではここまで来られなかったと思います。『あたらしい過去』がいとおしい、記憶が戻って今いる自分が無くなってしまうのが怖い、という文を読んでこみ上げてくるものがありました。2020/06/22
えんちゃん
64
Yahooトピで紹介されていた一冊。バイク事故で18歳までの記憶を失った青年。生活復帰から大学通学、就職を経て今に至るまでの12年間について。脳の損傷部分で失う記憶にも違いがあるのかな。身体は大人なのに頭は幼児。誤解や偏見もあっただろう。手記の内容がどんどん上手くなり、少しずつ覚えられる事が増える様子が私まで嬉しかった。2021/05/28
nyaoko
61
彼の話はアンビリバボーだったか、仰天ニュースだったか、確かにテレビで見たのだけど、もうかなり昔だったと思う。記憶だけではなく、生活の知識も経験も失われ、ゼロから生き直さねばならなかった、二度目の人生は本当に辛く、苦しいものだったろう。当時の息子や家族の様子を記したお母様の記録は目頭が熱くなった。息子がどれだけ迷っても、どんなに遅れても、失敗をしても、傷ついても、帰っておいで、大丈夫と一心に支え続けた姿には本当に感服でしかない。2023/02/20
カブ
53
著者は18歳の時のバイク事故で記憶喪失になった。記憶をなくすということは、彼自身のことはもちろん、ご飯を食べる、眠るなど日常のこともわからなくなってしまう。そんな著者が草木染め職人として独立するまでの手記。記憶喪失って映画やドラマで知っていたつもりだったけど全然違っていた。職人としての彼の仕事も垣間見ることができてよかった。2020/08/31
くろにゃんこ
52
18歳の時に事故で記憶をなくしてしまう。人が分からないだけでなく、文字の存在、食べること…全ての記憶を失ってしまうことがあるということが驚きでした。ご本人の不安もそうだし、お母さんの心配は計り知れないだろう。それでも大学に通い、車の免許も取得、染め物の職人さんとして活躍されている現在。すごいですね。2021/07/10