出版社内容情報
【歴史地理/日本歴史】愛情を受けず病気を繰り返した幼少期、全国を回った皇太子時代、明治天皇の重圧と闘いながら病状を悪化させていった天皇時代……。明治と昭和のはざまに埋もれた悲劇の天皇像を明らかにした、毎日出版文化賞受賞作が待望の文庫化。
内容説明
青年期の「行啓」「巡啓」を丹念に追い、政府によって半ば意図的に作り出された風説に埋もれていた、快活で家庭的だった大正天皇の素顔を明らかにした傑作評伝。その生涯をたどることで、明治と昭和を含めた近代天皇制全体の見取り図を描き出した、毎日出版文化賞受賞作。
目次
序章 悲劇の天皇
第2章 結婚まで
第3章 はつらつと全国を回る
第4章 天皇に代わって全国を回る
第5章 巡啓スタイルを確立する
第6章 天皇になる
終章 「昭和」の幕開け
著者等紹介
原武史[ハラタケシ]
1962年、東京都生まれ。明治学院大学教授。専攻は日本政治思想史。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。98年、『「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄』でサントリー学芸賞(社会・風俗部門)、2001年、本書『大正天皇』で毎日出版文化賞、08年、『滝山コミューン一九七四』で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
33
大正デモクラシーが花開いたことと、腰が据わらないデモクラシーがその後の昭和ファシズムを招いた歴史観は、明治天皇と昭和天皇が大帝で、大正天皇は影の薄い存在という天皇のイメージを規定しており、天皇の御代ごとに時代精神があるようにみえます。著者は実在の大正天皇がどのような人物で、大正天皇像はどのようにつくられたのか考察しています。兄弟が生後立て続けに死に、側室の下で病弱に生まれた大正天皇をみると、女系天皇論者は昭和平成期が例外であり、皇統の危機はやがて訪れると予想していることが理解できます。他方で大正天皇の健康2019/01/07
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
22
同じ著者の「皇后考」と2冊をセットで読むと理解が深まる。思ったことを何でも話し、滞在先をこっそりと抜け出して一人で自由に散策したり、侍従に行先を告げずに気軽に友人宅など訪れたりするなど、重圧を嫌い生き生きと振る舞う大正天皇の姿が紹介されている。公務以外では御所を殆ど出なかった父・明治天皇、寡黙な長男・皇太子(昭和天皇)とのコントラストがひときわ目立つ。大正天皇の評伝は数が少ない上、その人となりに対する一般的な理解が情報不足により誤解だらけであるということが理解できた。 出典の情報も価値が高い。2019/02/03
M.O.
20
私の中での大正天皇は「議会で突拍子もない行動をした天皇」ということだけで存在感の薄い人だった。しかしこの本で色々知った。漢詩に造詣が深く乗馬が得意、周囲の空気は読み取れないものの、きちんと説明すれば理解はできたはず、「人」が好きで、天皇らしからぬ天皇。皇太子時代までは有栖川宮という支えが居てくれたので無事過ごせたが、天皇に即位し相談出来る話し相手が居なくなったのが気の毒。そして病状を読むにパーキンソン病だったか? 原武史さんの出世作とのこと、無駄なく簡潔な文で読みやすかった。2024/02/04
鯖
20
ちょっとおつむが…との噂を流され、牧野伸顕や宮内庁によって病状を事細かに国民報告され、摂政をおかれるあたり、なんかクーデターかよって気持ちがちょっと。きさくに国民に話しかけるあたりは、逆に今だったら親しまれた天皇だったんだろうなあとも。臨終の床でようやくその手を握り、母としてふるまうことを許された柳原愛子の姿が哀しい。2022/02/06
jamko
15
『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』が面白かったので原武史氏の単著を。大正天皇って何もイメージを持ってなかったけど、皇太子時代はこんな自由な感じの人だったのかとびっくり。即位後のハードな生活が心身を病ませたのかと思うとほんと、人権もへったくれもないなと思う。大正天皇が皇太子時代に確立した巡啓が地方のインフラ整備のきっかけになったというエピソードが興味深い。気さくな父親から愛情をもらいながらも父でなく祖父明治天皇を規範とするよう厳しく育てられた昭和天皇の心中も気になるところ。面白くて一気読みでした。2019/03/18
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- 和書
- 陰陽師 〈鳳凰ノ巻〉