内容説明
18歳の美大生が交通事故で記憶喪失になる。それは自身のことだけでなく、食べる、眠るなどの感覚さえ分からなくなるという状態だった―。そんな彼が徐々に周囲を理解し「新しい自分」を生き始め、草木染職人として独立するまでを綴った手記。感動のノンフィクション。
目次
第1章 ここはどこ?ぼくはだれ?―’89.6~’89.8
第2章 これから何がはじまるのだろう―’89.9~’90.3
第3章 むかしのぼくを探しにいこう―’90.4~’91.3
第4章 仲間はずれにならないために―’91.4~’92.3
第5章 あの事故のことはもう口に出さない―’92.4~’94.3
第6章 ぼくらはみんな生きている―’94.4~’01.5
著者等紹介
坪倉優介[ツボクラユウスケ]
1970年大阪府生まれ。草木染作家。大阪芸術大学芸術学部卒。89年交通事故で記憶喪失になる。94年京都の染工房「夢祐斎」入社、染師・奥田祐斎に師事する。2001年草木染作家としてデビュー、マスコミで話題となる。04年独立し、世界中を旅しながら新しい染色技術を研究する。05年「優介工房」を設立。桜、桃、どんぐり、笹など、さまざまな植物での草木染を行い根強いファンを魅了しつづける一方で、記憶喪失を乗り越えた体験を語り、命の大切さを伝える講演を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ikutan
91
交通事故で記憶喪失になった18歳の筆者が、少しずつ周囲を理解し、新たな自分を生き始め、草木染職人として独立するまでを綴った手記。記憶喪失という言葉は知っていても、具体的にイメージしたことがなかったので、想像を絶することばかりだった。心細かっただろうし、辛かっただろう。ただ彼には、絵を描くという夢中になれるものがあったことと、そのことに気づいて、見守ってくれたご両親がいたことがよかった。特に、思いきって社会に送り出したお母さんが素晴らしい。新たな感性で染められた作品の写真からは、繊細な優しさが伝わってくる。2022/04/30
kou
80
とにかく凄い。食事、睡眠、読み書き等々、生まれてからの18年間の記憶を無くしてからの体験記・・・想像を絶するものがあった。そして、各章に挟まれる「母の記憶」は心に重く響く感じがした。本人のやる気、家族や周りの支えがあれば、ここまで出来るんだな!と勇気と共に暖かい気持ちになった。2019/09/12
mug
68
記憶喪失になった著者の手記。周りの人のことはもちろん、物の名前や使い方、私たちが当たり前に感じる感覚まで忘れてしまっている。幼児のような純粋な気持ちを持ちながら大人として生きるのは、大変なんて言葉では言い表せないほど。でも、美大生であった彼には、美に対する姿勢や見え方が良く影響を与えたのではないか?草木染めの着物からは生命力が伝わってきた。着物を見てこんなに感動したのは初めて(*^^*)2021/05/24
papapapapal
57
バイクの事故により、それまでの18年の記憶を全て失った坪倉さん。一般的に想像する「記憶」だけでなく、男女や時間、生死などの概念、熱い冷たい好き嫌いなどの感覚、食べる眠るなどの行為…それら全てを忘れ去っていた。体は大人だし、何となく喋れてしまうものの、内面は生まれたてそのもの。生まれたての赤ちゃんが初めて見る外の世界の描写を、想像ではない大人の文字で読むという不思議体験。その状態ながら、時を開けずに大学(芸大)に復学した坪倉さんが、職を得て独立するまでを描いた衝撃の実話。2020/07/26
きみたけ
55
テレビでご本人が出演されていたのを見てこの本を読むことにしました。事故後のご本人とご家族の苦悩や葛藤で始まり、途中から過去にこだわらず未来思考に変わっていく(それまでに相当の年月がかかっていますが)、感動の一冊でした。2020/07/25
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