内容説明
内戦やクーデターが起きるたびに登場する銃、カラシニコフ。開発者カラシニコフやシエラレオネの少女兵、ソマリアのガードマン、作家フォーサイスなどへの取材を通し、銃に翻弄される国家やひとびとを描く。朝日新聞特派員として数々の紛争取材に携わった著者による迫真のルポルタージュ。
目次
第1章 一一歳の少女兵
第2章 設計者は語る
第3章 護衛つきの町
第4章 失敗した国々
第5章 襲われた農場
第6章 銃を抑え込む
著者等紹介
松本仁一[マツモトジンイチ]
1942年、長野県生まれ。東京大学法学部卒。68年、朝日新聞社に入社。82年よりナイロビ支局長。90年、中東アフリカ総局長としてカイロに駐在。93年から2007年まで編集委員。94年、ボーン上田国際記者賞、97年、『アフリカで寝る』で日本エッセイスト・クラブ賞、2002年、『テロリストの軌跡』(草思社)で日本新聞協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
353
アフリカ通のジャーナリストである著者が、カラシニコフが開発したAK47(アサルトライフル)を軸に据えることで見えてくるアフリカの紛争地域や、各国のゲリラ組織の実態を炙り出したルポルタージュ。着眼はきわめて有効であったことが本文によって証左されている。AK47は誰でもが(すなわち、女性でも子どもでも)わずか短期間の訓練で扱え、しかも悪条件下でも故障もしないところから、ほとんど世界のあらゆるところに存在する。そして、この銃がアフリカの歴史を変えたといっても過言ではないのである。 2019/03/19
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
86
カラシニコフ、映画や小説などで頻繁に登場する自動小銃。構造が簡単で故障しない事から特に新興国に普及した武器。操作が簡単であるが故に少年兵にも使われている。反政府ゲリラの襲撃を受け、拉致、レイプされ、兵士として人を殺すことを強要された少女。内戦が終わり武装解除後も僅か100円ほどで売春をして生きるしかない子たちもいる。日本でいえばまだ中学生だ。平和な日本の裏側で、厳しい現実があることを改めて思い知らされた。設計者の話も興味深い。彼はただナチスから祖国を守りたい。その想いで銃を設計しただけなのだ。★★★★★2017/08/03
眠る山猫屋
59
20年近く前のルポルタージュだが、大変刺さる内容だ。誰にでも使える自動小銃として開発されたカラシニコフ。武器としての理念は間違っていない。だがその使いやすさ・故障の少なさから世界に拡散。1巻ではロシア・アフリカ編。少年兵たちの悲劇、溢れたAKによる国家破綻。現実から乖離したかのようなアフリカの日常。だが、終章ソマリランドの奇跡に救いを見る。住民たちが自ら武装放棄して力を合わせて自治を執行した地域。あのソマリアの一部で!なぜ世界はソマリランドを認めようとしないのか。理想世界を世界情勢が認めないという矛盾。 2021/10/09
白義
26
たったの13000円で買えて、変形した弾すら発射できるAKの驚異の安定性、信頼性が、いかに世界の紛争や犯罪の様相を変え、国家のあり方を内側から脅かしているかが、正視に耐えがたいような挿話と共に克明に記録されている。南アフリカの失敗国家群のレポート、カラシニコフ氏へのインタビューなど貴重な取材が多く凄まじい力作。11歳の少女がゲリラにレイプされ、そのゲリラに兵士にされ人を殺していったなど、日本とのあまりの違いに戦慄。どこの国に生まれるかだけでも人生こんなに変わってしまうのかと言う嫌な実感が残る2013/08/27
ジュン
15
私も紛争地帯にいくが、このノンフィクションの言葉には頷くことが多い。「イラク、ソマリア、パレスチナ、シエラレオネ・・・。新聞特派員として、これまで世界各地の紛争を見た。そこでAK47やFAL、M16など、多くの国の自動小銃に出会った。一番ほっとしたのは、その中に日本の自動小銃がなかったことだった」 「一九七六年いらい約三〇年、日本の自動小銃は、世界のどこでも、誰一人殺していない。それは武器を輸出していないからだ。一丁三十五万円という高値には代えられない貴重な事実だった」2016/02/18
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