内容説明
宗教教育に基づいた道徳を教えたい―著者のその願いは中学校で一学期間授業をする形で叶った。その授業は、やさしい言葉で教える仏教の「いちばん大切なこと」。仏教を通して質の高い生き方を、中学生だけでなく、すべての学生から熟年世代まで語りかける名著。
目次
なぜ宗教が必要なのだろうか
すべての文明には宗教がある
釈迦の人生と思想を考える
大乗仏教は山から町へ下りた
生活に生きる仏教の道徳
討論・人生に宗教は必要か
日本は仏教国家になった―聖徳太子、行基、最澄
空海が密教をもたらした
鎌倉は新しい仏教の時代1 法然と親鸞
鎌倉は新しい仏教の時代2 日蓮と禅
現代の仏教はどうなっているか
いまこそ仏教が求められている
著者等紹介
梅原猛[ウメハラタケシ]
1925(大正14)年、仙台市生まれ。京都大学文学部哲学科卒。立命館大学教授、京都市立芸術大学学長、国際日本文化研究センター所長などを経て、現在、同センター顧問。日本ペンクラブ会長も務めた。仏教伝道文化賞、NHK放送文化賞などを受賞。文化勲章受章。著書に『隠された十字架』(毎日出版文化賞)、『水底の歌』(大佛次郎賞)、『ヤマトタケル』(大谷竹次郎賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月讀命
37
飛鳥時代に大陸から渡来した仏教。奈良時代に聖徳太子が取り入れ、平安時代に最澄、空海が発展させ、鎌倉時代に法然、親鸞、日蓮、栄西、道元らが広めた仏教は、日本人の気質に溶け込んでいった。しかし、明治時代以降、仏教思想は廃れ、戦後現代の日本人は無宗教と言っていいほど重きを置かない状況になってしまった。いま世界では一神教であるキリスト教世界とイスラム教世界の対立という事態になり地球の未来も危うい。日本の仏教や神道は多神教であり他のものも認める多様性を持っている。各々相手を認め合う世界であってほしいものだ。 2018/08/15
pirokichi
25
道徳教育が大切と考える著者が洛南中学校で、道徳を裏付ける宗教、中でも仏教について授業を行った記録。最後の授業の1週間前に9.11同時多発テロが発生。現在30代半ばの当時の生徒達は9月には特にこの授業を思い出し、宗教について、又生き方について自分に問いかけるのだろうな。「西洋の聖者は二人とも殺された。ところが東洋の聖者は…釈迦は涅槃で静かに死につく。これは西洋の思想と東洋の思想を比較する上で大事な視点…」中学生向けなのでわかりやすく面白い。21世紀を生きる者たちへの著者からの熱いメッセージとして受け止めた。2021/09/18
やてつ
18
子供の春休みの課題図書としよう。横断的に宗教(特に大乗仏教)を学ぶために適した一冊。また、911テロ直後に行われた授業、今後の世界情勢の予測は不気味なほどに的中。著者の鋭い洞察力に敬服。 2015/03/06
TheWho
17
哲学者の梅原猛が、真言宗系随一の進学校の洛南中学校の生徒に向けて宗教の体系から哲学・思想を踏まえて、仏教の体系、思想、変遷の歴史、そして日本に与えた精神文化としての影響や仏教思想の発展、更に人としての道徳観等を分かり易く講義した一冊。著者は、仏教を語る前にトルストイの「カラマーゾフの兄弟」を引用し宗教の存在意義を語り始め、更にルネッサンス以降の宗教否定の西洋哲学の限界、そしてそれと比較した仏教哲学、体系を説明している。分かり易い仏教体系のみならず比較文化論としても興味深い一冊です。2014/09/14
金吾
15
○中学生相手の授業をまとめたものであり、わかりやすくユーモアもあり面白かったです。特に空海と最澄、法然と親鸞の性格の違いは笑えました。宗教がなければ道徳はないということについては本質的な話だと感じました。2020/01/25