出版社内容情報
大砲など圧倒的な近代戦力で迫る西欧に開国せざるを得なかった幕末日本。鎖国中とはいえ、蘭学に目を開く蘭癖大名のネットワークによりごくわずかの輸入品から、科学技術は意外にも発達していた。開国後、後発工業国として出発した日本は、いかにして先進国の技術を追い、はては日清・日露・二つの世界大戦に参戦するに至ったのか。紡績、軽工業、製鉄、造船など産業技術の移転、学習、内実化の諸段階を追う。はたして日本は産業革命を経て近代技術を手にしたのか。技術の世界史から問い直し、敗戦の焼け野原を経てなお、高度経済成長を開始する日本の近代技術の特質を考える。
内容説明
東から西へ、世界でものと人の移動に伴い繰り返された文明の移転は、18世紀、イギリスで産業革命に結実し、機械で商品を生産販売する時代を生んだ。同じころ鎖国下の日本では、西からの珍品貴宝を求める蘭癖大名らが技能者を巻き込み、反射望遠鏡、時計、大砲などが製品化されるほどに各地でネットワークを築いていた。開国後、殖産興業のスローガンの下、日本の技術者や在来職人は、外来技術と在来技術をうまく組み合わせて、製糸業、紡績業、軽工業、機械工業、製鉄、鉄道などの分野で独自の発展を生む。この間日本は、日清、日露、第一次世界大戦を経験し、勝つたびに領土拡張するも、最後の第二次世界大戦に大敗しすべてを失う。しかし10年後には高度経済成長が始まる。それはなぜか?技術の角度から考える。
目次
第1章 地球史的角度から見た日本と産業革命
第2章 レバント貿易から産業革命まで
第3章 日本の原生的産業革命または後発工業化
第4章 三つの戦争と軍工廠の肥大
第5章 二つの世界大戦の間
最終章 太平洋戦争・敗戦・高度成長
著者等紹介
中岡哲郎[ナカオカテツロウ]
1928年、京都生まれ。技術史家。53年、京都大学理学部卒業。定時制高校教諭、企業技術者を経て、神戸市外国語大学講師、大阪市立大学、大阪経済大学教授を歴任。83年にメキシコのエル・コレヒオ・デ・メヒコ客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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