内容説明
幅広く活躍する宗教学者が、柳田国男・折口信夫、吉田満、宮沢賢治などの作品をもとに、日本人の死の受容の変遷を読み解く。
目次
第1章 「おくりびと」と二一世紀初頭の死生観
第2章 死生観という語と死生観言説の始まり
第3章 死生観を通しての自己確立
第4章 「常民」の死生観を求めて
第5章 無惨な死を超えて
第6章 がんに直面して生きる
著者等紹介
島薗進[シマゾノススム]
1948年、東京都生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒業。現在、東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学・宗教史学研究室教授。主な研究領域は近代日本宗教史、死生学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポカホンタス
6
スピリチュアルケアの勉強にと思って読んだ。スピリチュアルの世界に医療として踏み込む時、科学性が担保されなくなることへの不安や抵抗が強く起きる。しかし本書のよう社会学的、民俗学的アプローチを取ることで、客観性が担保され、医療者もなじみやすい。医療の場でスピリチュアルを扱うコツを教えてもらった気がする。2012/08/17
ハル
4
日本人の死生観に対する流れ。死を身近に感じることは少ない。しかし死を身近に感じるとき、死は決して生の対極にあるものではなく、常に生の隣にある。死を意識して感じる生の生々しさ、眩しさ、残酷さ。死があってこそ、生の輝きが本物になる。2016/11/09
明
4
死生観についての考察というよりは、先人たちが死生観をどう理解してきたかを紹介している。深く考えるというよりは概要を。単純化しすぎなところもあるけれど、読みやすくて面白かった2015/05/24
telephone
2
「死生観」を表現した近現代日本人の書物を読むというスタイル。上質な書評を読んでいる感じにも思えた。最後に取り上げられていた高見順の詩に感動した。2014/01/02
yu01
2
現代に現れる死生観の多様な流れを、明治初期の国学/武士道、明治初期の教養人、柳田國男/折口信夫、戦中派の吉田満、戦後のがん闘病記、ホスピス運動、そしておくりびと/青木新門らに代表させ読み解いていく。死生観という切り口で宗教も含めた大きな精神性を分析している。学術書の体裁ではなく、その記述はときに共感的で文学批評のよう。こちらも共感せずには読めなかった。現代人に必要な霊性(≒宗教性)を問い続けてきた著者の現時点の回答のようにみえる。2012年刊。2013/04/23