内容説明
1923年9月1日に発生した巨大地震により、関東の1府6県は地震・津波の被害を受け、首都東京、横浜は火災によって壊滅状態となった。死者・行方不明者は10万5000人を超え、東京の下町のほとんどが焼失、焔の中を人々は逃げまどった。88年を経て各県の公文書館などで公開されはじめた大量の震災資料をひもとくと、被災者がどこへ動き、救援のマンパワーはなにを提供し、行政がどう応えようとしたかがみえてくる。避難・救援・生活再建、義捐金の配分、政府閣僚の復興構想とそれへの反論など、当時の様相を膨大な資料から掘り起こし、大災害から立ち上がる人々の実像を描き出す。
目次
序章 メディアが捉えた震災
1章 関東大震災の救護と復興計画
2章 震災地の罹災者・東京―救護の力
3章 バラック設置から閉鎖まで
4章 地方へのがれる避難民
5章 震災義捐金を活かす
終章 帝都復興計画の行方
著者等紹介
北原糸子[キタハライトコ]
1939年山梨県生まれ。1962年津田塾大学学芸学部英文科卒、1971年東京教育大学大学院日本史専攻修士課程修了。神奈川大学歴史民俗資料学特任教授を経て、現在、立命館大学歴史都市防災研究センター特別招聘教授、歴史地震研究会会長など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
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関東大震災について震災復興の2年目までと期間をしぼる代わりに主に政府の震災対策の動きとしてあまり紹介されなかったところを資料を集めて説明した一冊。戦前の日本は強力な中央集権を持つ国であり、本書の対象としている関東大震災ではその権力の強さがよく分かる。それは軍隊や警察をトップダウンで動員することに限らず、各府県の知事以下が内務省から任命されており、復興支援が中央からの指示で進められました(義援金調達のために公務員の給与から一部天引き、支援物資調達のために民間物資の徴発や資金の借入も行うところがあった)。2022/07/22
ホンドテン
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図書館で。関東大震災発生後の罹災者救済の実態を政府中枢、実業家群から青年団、婦人会更に避難民自身まで関連資料から把握された各主体の行動によって解き明かした本。ここ暫く読んできた震災本の中でももっとも研究書寄り。避難民の地方への移転や地方での支援活動が実に迅速だったことが統計的に明らかになり、吉村の記述した情報寸断や避難苦労譚の補足となった。この頃、後藤らが把握、議論していた災害救済の課題設定が現代の防災議論と重なるものが多く。ほぼ出揃っていたのを思い知らされる。2014/11/26
takao
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ふむ2025/03/11
こばこ
0
図書館借り。関東大震災に関して、主に「救護計画・バラック・地方へ逃れる避難民への措置・震災義捐金」の、やや人の動きに関わる部分の多い4つのトピックにクローズアップし、調査、その提示を行ったもの。個人的に面白かったのは地方と東京(首都圏?)の関係にフォーカスを当てた後者2トピック。義捐金に関してはその後「大大阪」とも呼ばれる大阪のパワーがすごかったのだなと感じさせるところ。今起こればおそらく違う様相になるんだろうなと思いつつ。より首都集中が進んでいるなか、どうなるのかと…。2018/02/26