朝日選書
毒ガス開発の父ハーバー―愛国心を裏切られた科学者

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  • サイズ B6判/ページ数 235p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784022599346
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C0323

内容説明

第一次世界大戦下、史上初の毒ガス戦がヨーロッパで繰り広げられていた。ドイツ軍で毒ガス開発の指揮をとったのは、のちにノーベル賞を受賞したユダヤ人科学者フリッツ・ハーバー。友人のアインシュタインからは「君は傑出した科学的才能を大量殺戮のために使っている」と言われていた。自身も科学者であった妻クララは夫の殺人兵器開発に反対し、初めて実戦に使われた1915年に自ら命を絶つ。ドイツの勝利のために狂奔したハーバーだったが、最後には最愛の祖国に裏切られる―。大戦終結前後、ドイツと日本の科学界のあいだに緊密な協力関係が築かれていった。それは、ハーバーと星製薬設立者・星一の、終生つづいた交流の賜物だった。

目次

生い立ち
挫折と苦闘の日々
陽の当たる場所へ
空中窒素固定法の成功
家庭崩壊の兆し
毒ガス戦の先頭に立つ
死の抗議と第二のロマンス
敗戦と逃亡
ノーベル賞、星基金、チクロンB
海水から金を採取せよ
日本訪問
報酬は国外追放
最愛の国家に裏切られて

著者等紹介

宮田親平[ミヤタシンペイ]
1931年東京生まれ。東京大学医学部薬学科卒業。文藝春秋入社。雑誌編集者などを経て、現在フリーの医・科学ジャーナリスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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harass

74
化学肥料に不可欠な窒素を空気から抽出する方法を開発したノーベル賞受賞科学者の評伝。第一次大戦時は彼は毒ガスを開発し、戦場で自ら毒ガス戦を指揮していたという。ヒトラー率いるナチ党の反ユダヤ政策で、ユダヤ人の彼は晩年国を追われる。この本は評伝としてはちょっと薄いように感じる。戦前独科学界と日本の関係、星新一の父、星一の活躍などが取り上げられている。まあ良書。科学者の良心を問うのはやや陳腐に感じてしまうのはそういう本を読み飽きている自分だけか。2018/08/04

こーた

63
空気から肥料を生み出し、人類を食糧危機から救った偉大な科学者は、なぜ毒瓦斯(ガス)博士とよばれるようになったのか。祖国を愛し、国家のためをおもって科学にうちこみ、だれよりもドイツ人たらんとしたハーバーは、ユダヤ人である、というただそれだけの理由で国を追われ、失意のまま国境のすぐ外側でその生涯をとじる。愛する国に裏切られるさまが、あまりにもせつない。科学と国家、その関係の危うさを、愛国心というかりそめの誇りの、脆さ儚さを想う。攘夷志士から星一(星製薬創業者にして星新一の父)まで、日本との縁も存外に深い。2016/12/02

mazda

29
空中窒素の固定はまさに「世紀の発明」で、窒素肥料をもたらすこの発明が人類にとってどれほどの影響を及ぼしたのか、一般にはあまり知られていないように思います。このように広く人類に役立つ発明も、実は爆薬製造にも使えるとは皮肉なものです…。ハーバーはこの発明でノーベル賞を受賞しますが、対フランス戦のために毒ガスを作ることにまい進し、陸戦条約を拡大解釈し実際に使用することに成功します。特に20世紀は戦争の世紀だったため、人の役に立つ技術が、人を殺すための技術になってしまうことを改めて思い知りました。2015/04/05

kana

10
映画のようなドラマチックな生涯で、不幸な天才といったイメージを持った。アンモニアの合成方法発見により食糧難を防ぐが、戦争が勃発すると毒ガスの開発により多くの人の命を奪った。特に悲劇的に感じたのは、12年ぶりの再会を経て結婚したクララの抗議的自殺、そうして家庭を犠牲にしながら国のために文字通り東西奔走したにも関わらず政権が変わるとユダヤ人ゆえに追放され、偉大な科学者から「ただのユダヤ人ハーバー」に落とされたこと、殺虫剤として開発したはずのチクロンBがユダヤ人殺戮に使われたこと。2022/07/03

電羊齋

6
フリッツ・ハーバーはまさに「時代の子」だったのだろう。ドイツナショナリズムの高まり、化学の勃興の中で育ち、ひたすら研究に打ち込み、空気から肥料と火薬を生み出し、やがて祖国ドイツのために毒ガス開発にまで手を染める。だが、そんな彼もユダヤ系という出自ゆえに最愛の祖国から追われる。 科学とは、愛国心とは一体何なんだろう? 日本との意外な関わりも興味深い。2017/05/19

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