内容説明
心の扉を開き、はじめて創作の秘密を明かす。人目にふれることの少なかったエッセイ、講演草稿、親友の証言を収録。
目次
M.C.エッシャーから息子のアーサーに宛てた1955年11月12日の手紙から
1 芸術家か版画家か
2 実現しなかった講演会
3 四つの趣味
4 内省的なエッシャー像
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
28
エッシャーが平面の世界に幾何学的図形を描くのは、「私たちは秩序を生み出したいがために、混沌を愛する」という調和の奇跡を望んでいる。アーティストだけではない、哲学者のような言葉遣いにも人としての深みを感じる。そうやって作品を観るとなんとなく、なるほどと。2019/06/12
らん
18
エッシャーは自身をアーティスト(芸術家)というよりもアルティザン(職人)、あるいはひたすらコントラスト(対照的なもの)にとりつかれた真摯な版画家として規定していた。この本はエッシャーの似ている図柄の作品を比較して構成の違い等を解説。又、ヒントを得た図や小説も語る。《上昇と下降》の連続的な階段のテーマはエッシャーの発明ではなく、英国の数学者L・S・ペインローズ教授に負うもの(L・Sペインローズの階段)。H・Gウェルズの小説「透明人間」から螺旋や帯のイメージの版画のヒントを得た。2022/04/20
sutaco
3
エッシャーの講演録や書いたものをまとめて、最後に解説をつけたもの。自分が好きなあの絵はエッシャーにとっては通過点でしかなくて、どちらかというと嫌いな魚の絵がエッシャーにとっては到達点だったらしいことにチェッと思う。ま、そんなものかもしれないけど、その分のエッシャーの孤独は計り知れない。2016/01/02
ハム太郎
2
エッシャーの残した様々な文献を編集したもの. 友人フェルミューレンによる,エッシャーの人物像や作品の象徴性についてのエッセイも秀逸. エッシャーの作品のテーマにはいずれも数学的な整合性・秩序がみられるが,特に平面の正則分割に関しては多くの解説が含まれており,考察の深さ,直観力,洞察力に感動さえ覚えた. 2013/07/02
ネオおしりいぬ
2
エッシャー自身が何が楽しいと感じるか、そのためにどのような技法を使っているか、その技法にあったテーマはなにかと明晰に描かれている。 絵や余白の割合が高いので、見た目の厚さの半分くらいの内容かも。 前書きや後書きにあるような作品を作家の人生と関連づけて属人的なものにしようという考え方は余り好きではない。2013/04/26