内容説明
少女たちは沈黙のなかに閉ざされることを欲し、うつろな目と石の胸を持つ青白い彫像になりたいと望んでいる。いったい娘たちをどうしたものか?夜ごと姉妹団は私たちの町のなかを動いていく。(「夜の姉妹団」)。僕たちは光のなかでしなかった。僕たちは闇のなかでしなかった。刈り立ての夏草のなかでもしなかったし、秋の枯葉の山のなかでも、月光が僕らの影を投げかける雪の上でも僕たちはしなかった。(「僕たちはしなかった」)。「でも母さん、クラウチ・エンドなんかで何してるの?母さん、死んだんでしょ」母はキッとなって言った。「知ってるわよ自分が死んだことくらい、あたしがこの十か月何してたと思ってるのよ?カリブ海のクルーズに行ってたとでも?」(「北ロンドン死者の書」)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Greatzebra
15
柴田元幸氏が翻訳した英米現代作家の短編集。「栞と嘘の季節」に「夜の姉妹団」が出てきたので読んでみた。それに出てきたのは、ミルハウザーの短編集「ナイフ投げ師」であって本書ではない。「ナイフ…」の方にも「夜の姉妹団」が入っているのだ。で、今回読んだ方は、前衛的というのか夢の中をさまよっているというのか、ストーリーもはっきりしない話ばかりで、これは好みが分かれると思う。私はまあ嫌いな方ではない。ただ、読みにくくてすぐ眠くなる。ナイトキャップ本には良いかな。2025/08/07
あたびー
8
他の短編集と組み合わせて1日1話ずつ、時には寝落ちしてしまい戻ったり、随分時間がかかってしまったが、とても楽しいアンソロジーだった。元々表題作を読もうと買ったら、そちらは別の本に入っていた。レベッカ・ブラウン「結婚の悦び」新婚早々始まるパーティーは家の有り様まで変え、妻を次第に追い込んでいく。ミハイル・ヨッセル「境界線の向こう側」ソ連時代にアメリカ人の留学生と出会い衝撃を受けた青年のその後。遡る家族の歴史。スチュアート・ダイベック「僕たちはしなかった」なかなか『できない』カップルの話。(続く)2018/12/15
Ducklett21
6
翻訳家の柴田元幸さんが、好きな現代小説を自由に選んで訳した短編集。飄々とした雰囲気で、おかしなことが起きていくいかにもな小説が選ばれていて、柴田さんの小説愛が伝わってきます。子供を理解できない大人の不安がよく伝わる表題作、結婚したあとどんどん取り残されていく感じを描く「結婚の悦び」のような考えさせるお話もありますが、「古代の遺物」「いつかそのうち」「匕首を持った男」「ラベル」「北ロンドン死者の暑」など、奥深い想像の世界を旅させてくれる話が多く、素敵な体験となりました。翻訳家の色が出る短編集は面白いですね。2023/09/19
mejiro
6
スチュアート・ダイベック「僕たちはしなかった」、ジョン・クロウリー「古代の遺物」、ドナルド・バーセルミ「アート・オブ・ベースボール」、ジェームズ・パーディ「いつかそのうち」、ルイ・ド・ベルニエール「ラベル」が特におもしろかった。存在感のある表紙。2015/01/26
まさ☆( ^ω^ )♬
5
ずっと読みたいと思っていた本書。新刊では手に入らず、古書を探してようやく手に入れた。柴田元幸さんが好きな作品を選び翻訳した作品が14遍。全く知らない作家の短編を読めるのも面白い。表題の「夜の姉妹団」、「アート・オブ・ベースボール」「匕首をもった男」「ラベル」「北ロンドン死者の書」が特に面白かった。「匕首をもった男」は、ボルヘスの「南部」という短編の結末で何が起きたのかを探りに行った作家のお話。本棚からボルヘスの短編集を取り出し「南部」を再読しながら楽しんだ。2024/07/12
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