内容説明
学校という巨大なシステムと、正面から対決しなければならなくなった、東京近郊の中学生夏美。その母、史子。はたして、二人は心を通いあわせることができるのか?二人は、どんな道をたどるのか?―現代社会に生きる人間たちの熱く、苦しいまでの息遣いを、温かく、優しいまなざしでリアルにとらえた朝日新聞連載小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雛
5
不登校がまだ「登校拒否」と称されていた時代、1987年の朝日新聞掲載の小説である。当時、不登校を真っ向から描いた小説として一世を風靡し、黄色い髪という言葉にはインパクトがあった。時は流れて21世紀、作者の干刈あがたさんは残念ながら若くして亡くなった。そして「ええ、そうです。登校拒否でも非行でも、親にとって死なれるよりはましです」という主人公と気持ちを同じくする親は増えるばかりの社会なのである。2016/03/06
nagy
2
学校の現代文のワークに載っていた事をきっかけに読み始めました。クラスの目線を気にせずに里子の掃除を手伝う夏実は強い子なんだろうなぁ・・・と思っていたのもつかの間、いじめにあってからどんどん堕ちていく。最初の印象を覆されて、強いと思っていた子が堕落していくのって、ちょっと切ない。でも最後には、自分自身で選んだ道を進む姿勢で、応援したくなりました。夏実ならきっとやれる!2010/12/22
やたそ
1
どんなに頑張っても、世の中の半分は平均以下だ…というような言葉があって、当たり前だと思うと同時に、なにかにハッと気付かされたような気持ちに◇小6のときに国語の文章問題でほんの一部を読んだ小説。まさか30にらなるまで気になっているとは◇現代なら「序の口」と言われそうな些細なきっかけで、登校拒否になった中学生の夏実。夏実だけでなく、登場人物それぞれの迷いに、懸命な生を感じることができる。とくに母の史子に感情移入できる年齢で読んで良かった。この小説が訴えた教育現場の問題は、現代でも未解決なんだろう。2018/03/20