内容説明
“カメラマン将軍”のモニュメント。15代将軍徳川慶喜は明治以後、歴史の表舞台から姿を消し、晩年の消息を伝えるものは少ない。慶喜の直孫によって秘蔵されてきた数々の写真は、空白の時間を埋めると同時に、その卓越した写真技術は、明治の風俗、歴史を物語って貴重である。
目次
仕えた人たち
静岡時代
東京・巣鴨邸
小日向邸
一ツ橋家
原宿地田家別邸
浅野家四ヶ原別邸
有栖川宮家別邸
伏見宮若宮邸
飛鳥山渋沢邸
駒込土井邸
東京風物誌
東京勧業博覧会
正月飾り(小日向邸)
周辺の人びと
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
63
読友さんのレビューに惹かれて。徳川慶喜が、多くの写真を撮っていた。江戸開城後、静岡に30年ほど暮らし、その後東京に戻ったらしい。明治の巣鴨、上野、靖国神社、原宿、等々。慶喜の写真は、明治の風景、人物をあるがままに写し出している。なんとも静かで美しい。あの激動の時代を生きた最後の将軍は、どのような気持ちでその後の人生を生きたのだろう。その人生に、その時代に、思いは飛ぶ。人間慶喜が見えてくるような気がする。驚きの貴重な写真集だ。2018/10/12
真香@ゆるゆるペース
38
図書館本。江戸幕府最後の15代将軍徳川慶喜は、瓦解後は運良く命拾いして隠居し、悠々自適に趣味に生きた人だった。数多くの趣味の中でも、写真は特にお気に入りだったとか… 現代ではなかなかお目にかかれない光景が展開されており、前のページのカラー彩色が施された写真は、キレイで思わず見入ってしまう。史料という観点でも、どれも当時の日本を知ることが出来る貴重なものといえる。孫の幹子さんによる解説の、将軍ではなく人間としての慶喜のエピソードもなかなか興味深い。2019/02/13
たまきら
27
側室さんとか、我慢強く座ってくれたであろう人たちのポートレイトがなんだかほほえましいです。どこか飄々とした真の「大名」といった風情が伝わってきて思わず微笑んでしまいました。ちなみに、墨田区の郷土文化資料館発行の、けーき様撮影の本所をまとめた冊子も面白かったです。2019/01/28
おとん707
10
徳川慶喜は大政奉還後は歴史の表舞台に出ることはなく趣味の写真などを楽しみながら余生を過ごした。この写真集は慶喜の孫慶光氏が保管していた慶喜撮影の写真を慶光氏の子(慶喜のひ孫)で写真家である慶朝氏の監修の下に編纂したもの。慶喜の写真は技術もさることながら被写体を生き生きと捉える抜群のセンスを感じる。写真は鮮明で、貴重な記録であり芸術でもある。近所の農民や自分の使用人の写真も多く慶喜の人柄を偲ばせる。大村益次郎像や会津白虎隊碑の写真もあるが慶喜はどんな思いで撮ったのであろうか。自宅や親族知人の写真も興味深い。2021/10/15
YuiGaDokuSon
8
大激動の中、若年で多くの苦渋の大決断を下した人とは思えないほど対象的な、静かな余生を過ごしていたことが読み取れる。あれだけの出来事の渦中で将軍職を務めた人が、辺りを歩き、三脚を立てて静岡の農民の姿や景色を写真に収めている、ということは驚くべき姿だ。この人はきっと、無駄な欲をかかない、好奇心溢れた平和主義者であり、故に徳川幕府をああいう形で終わらせることができたんだろう。慶喜公の人柄がすごく感じられる写真集だ。2013/01/30
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