出版社内容情報
台湾で生まれ、15歳までは「あいうえお」も知らなかった著者は、日本語の何に魅了されたのか。第二言語として日本語を学ぶことの面白さと困難さ──。日本語への新たな知見があふれる、芥川賞作家による珠玉のエッセイ集。
内容説明
台湾で生まれ育った芥川賞作家は、日本語の何に魅了されたのか。珠玉の語学エッセイ。
目次
バレンタインの奇跡
サチコとポケモン
小さい魚は催眠術をかける
私だけのオアシス
日本語って難しいでしょ?
愛憎入り交じる外来語
変な日本語にご用心
美しき数式―私的日本語文法論
凡人なりの努力
手の焼ける生徒なのだ
漢文という裏技
四文字の宇宙
アイスブルーの蛙
理不尽な海藻
指数関数的成長期
震災と留学
新宿、ガラケー、円高
コンビニ勤務記
修業時代の洗礼
音を科学する魔法〔ほか〕
著者等紹介
李琴峰[リコトミ]
1989年、台湾生まれ。作家・翻訳家。2013年来日。早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。17年「独舞」(単行本化に際し『独り舞』に改題)で群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。21年『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『彼岸花が咲く島』で芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
119
「珠玉の語学エッセイ」という宣伝文句に偽りなしの素晴らしい一冊。日本語を母国語としない芥川賞作家の李琴峰さん。台湾で中学二年の時に、独学で日本語の勉強を始める。「私が日本語を勉強したのは実用的な目的ではなく、ただ日本語が好きだからだ」と言うほどの日本語への深い愛情と関心。「象は鼻が長い」構文への戸惑い(主語は何?)、「日本に行きたいんだ」の「んだ」って何?など、真剣に日本語と向き合うからこそ生まれる疑問にハッとさせられる。それに、この人が書く日本語の文章がとても美しく、それもまた感動的である。2025/03/14
tamami
57
台湾で生まれ育った著者は、日本語への愛の赴くままに、日本の大学に留学、台湾の大学を卒業後はさらに日本語の奥義を究めるべく、早稲田大学の大学院に進学する。彼女にとって最愛の言語となった日本語を駆使して小説を書き新人賞を獲得。その後芥川賞も受賞。本書は、そんな著者の日本語との出会い、母語である台湾語、中国語と日本語との内心の葛藤が言葉巧みに表現され、高校の古文学習を想起させる文法の話題など、やや煩瑣に過ぎる記述もないではないが、日本人以上に日本語に巧み(失礼!)な著者のなお深く日本語を学ぼうとする姿勢に感服。2025/07/02
ネギっ子gen
53
【日本語の変幻自在の表情を探索し発見し続けることで、その豊かさに更なる花を飾ろう。私は書く。自分で見つけた日本語で――】生国・台湾を離れた著者が、第二言語として日本語を学ぶ中で知った、面白さと困難さを綴った書。<私はこれまで、日本語から数々の祝福を受けた。日本語を習得することで、人生は間違いなく豊かになった。/最終的に、作家という肩書きまで授かった。これは生涯を捧げて返さなければならない贈り物だ。だからこそ、私はこれからも日本語に祝福を捧げよう。言葉を紡ぐことで、精いっぱいの返礼をしよう>と。⇒2025/05/11
Karl Heintz Schneider
38
「日本語って難しいでしょ?」台湾人である著者はたびたびそう聞かれることがある。しかし同じ漢字を使う民として、日本語の漢字は、その字面からほとんどの意味が類推できるという。一方全く違う意味だったり、日本語独自の漢字もあるにはあるが、著者はそれを逆に面白いと感じ、異国情緒に浸れると言ってのける。スペイン語の後にイタリア語を学んだ私がちょっとした違いにキュンとなる感情と似ているのかもしれない。語学を学ぶ上で一番大事なことは面白がること。私と同じ感覚を持っていることがわかって嬉しかった。2025/07/16
yyrn
21
この著者ほど日本語の構造や文法、用例や漢字圏の外国語との比較にも詳しい上に、美しい日本語の文章を書ける小説家はそうそういないのではないか(匹敵するのは故井上ひさしくらいかw)。▼しかもそれが台湾で生まれ育った女性で、日本人以上に日本語を愛し、それを自然体の日本語で文章に現わしてしまうのだから驚きを覚えるが、ただそのメンタリティーは日本人とはだいぶ違って、日本語能力が高いのは才能ではなく私の努力の賜物だと言い切るところなどは少し鼻白むが(謙譲は美徳と思わないのか?)国民性というよりは年代差なのだろうかw?2025/04/05