出版社内容情報
うだつの上がらない「作家」である私の人生の折々に登場してくる、死神。中学二年生で初めて出会ったあいつのことだけは、これまで作品には書けなかったのだが……。芥川賞作家が描く「死」と「家族」。ユーモラスにして、痛烈な新境地。
内容説明
中学二年生のとき初めてあいつと出会った。出会ったから死にたくなるのか…死のうとするから現れるのか。芥川賞作家が描く「死」と「家族」。ユーモラスにして、痛烈な新境地。
著者等紹介
田中慎弥[タナカシンヤ]
1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。2005年「冷たい水の羊」で第三七回新潮新人賞を受賞し作家デビュー。08年「蛹」で第三四回川端康成文学賞受賞。同年「蛹」を収録した作品集『切れた鎖』で第二一回三島由紀夫賞、12年「共喰い」で第一四六回芥川龍之介賞、19年『ひよこ太陽』で第四七回泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダミアン4号
31
暗い…唯々暗い♪クライ フォー ザ ネイション…ダジャレを呟かないとやってられん。でも同じ事考えなかったか?と訊かれればYES…怖いから…痛いのが嫌だから…パパゲーノ。勉強が出来ない。運動も苦手…それでも自分は特別と思っている。僕には必殺の武器がある=自殺…だから…この世に非ざる存在“死神”に憑かれてしまう。彼の両親も彼自身も好きになれない。こんな面倒な奴とは付き合いたくない。立派なとかまともなとか…偏った小さな価値観に囚われた家族。彼は希望を見出せたのか違うのか…これからもきっと死神を見てしまうんだろう2025/04/23
寒苦鳥
3
本屋さんね平積みされていて、表紙のインパクトとタイトルが気になり中をひらけ立ち読みすると‥‥なるほど、読みやすい文体だし面白そうだと思い即購入。 最初は現実離れしているように感じたけれど、後半にどんどんと現実に近付いてくるように感じ、また疾走感が増すように感じた。 無機物的な死神に思ったけれど、其々に個性があって最後の方はマスコットのように感じた。そんなポップな内容ではないのだけれど。 この夢か現かわからないような惑わすような表現、すごく好みだった。2024/11/23
md5
2
禍々しいタイトルと表紙からホラー小説かと思ったが、ファンタジーな私小説?のようなものだった。 死にたがっているから死神が付くのか、死神が付くから死ぬのか、「鶏が先か、卵が先か」みたいな概念。 2025/04/03
taiyou gyousi
1
中学生の頃から死神に付きまとわれ、「お前は自殺する運命にある」と言われたら、もうお先真っ暗。しかも、父親には手を出され、母はそれに服従するというかなり歪んだ家庭。読み進めるのがしんどかった。でも、状況は変わっていく。いつの間にか死神に友情のようなものを感じ始める。家庭内も立場が変わっていく。そして、最後には、変なリアリティを感じて、もしかすると私小説なのではと思ってみたりする。2025/04/11
烏骨鶏
1
中学生の頃死神と出会い、それからずっとまとわりつかれるというか、共に生きてるというか、そんな状態にあった主人公の半生が、それでもなお、誰かしらの人生と同様、共感できる思いが沢山詰まっている。社会背景や、親世代の物の考え方や、そういえば表の世界はそういうものが歴然としてあって、でも今思えばそれって何だったのだろうと、作品から死神の彼のように浮かんだりたゆたったりしていろんなことを思った。2025/02/03