出版社内容情報
パンダと生きとし生けるものとアヒルのおもちゃ。すべてをやわらかく繊細にくるむ、小説の秘術――大森望ここには、“命をあずかる”というケア責任の普遍性がそっと提示されている――小川公代 (「一冊の本」2024年10月号より)テロと戦争が常態化する時代の渦中に命をあずかり平和の実現を企てる組織が存在した――?あなたを思えば世界は救われる。【あらすじ】春先になると花粉症で鼻が利かなくなるモトコは、副業で働くアルバイト先の同僚・村崎さんから自宅で飼う小動物たちの世話を頼まれる。その後、職場を辞めた村崎さんのメールからは、パンダと人類をめぐる狩猟、飼育、繁殖の歴史がひも解かれ、ある目的で海外を転々としていることが見えてくるのだった。モトコが村崎さんの指示を仰ぎながら動物たちの世話をつづけるなか、上野動物園では日本が所有する最後のパンダ・リンリンが亡くなり、中国ではオリンピックを前に、加工食品への毒物混入事件と大地震が起きる――。命をあずかることと奪うこと。この圧倒的な非対称は、私たちの意識と生活に何を残すのか? 「命をあずかる」というケアの本質に迫りながら、見えない悪意がもたらす暴力に抗うための、小さく、ひそやかな営為を届ける問題作。
内容説明
テロと戦争が常態化する時代の渦中に命をあずかり平和の実現を企てる組織が存在した―?あなたを思えば世界は救われる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
174
高山 羽根子は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、小動物飼育代行哲学小説、不穏な作品でした。 飼育している動物群の中に、パンダの赤ちゃんが含まれていても最初は小さいので、判らないかも知れません。 https://publications.asahi.com/product/25034.html2024/10/20
ケンイチミズバ
79
人間の身勝手。散々狩猟、捕獲し挙句に絶滅危惧種に指定。少なくなると価値があがる。経済理論により殺してよかった時代の剥製や毛皮すら高値に。乳牛の皮革を使用した偽物まで登場する始末。世界にパンダの愛らしさがあふれかえる。マスコミが話題にし、人々は観たことを自慢し、グッズを購入したマヌケな時期がある。中国政府による外交手段に使われている今、パンダは生物なのだろうか。駆け引きの道具ですらある。共産党の気分を害したら貸し出し中止、返還を求められる。清朝時代は食べていたらしい。し、そんなに旨くもなかったようだ。(笑)2024/10/16
fwhd8325
70
高山さんの作品は、今までも読んでいて、どこか心に刺さるものを感じています。作品に、社会が描かれていると思います。それがスケールの大きいものであっても、無理に力を入れずん淡々と描いている。それが高山流だと思っています。この作品にも淡々とではあっても、環境だったり、そこから派生する生態系だったりと、ふむふむと思う内容が描かれていて、さすがだなと感じました。2024/11/23
もぐもぐ
52
古い映像のアーカイブデータを地デジ放送用に編集する仕事をしながら、副業でカラオケ店のバイトをする篠田モトコ。彼女はバイト先の同僚の村崎からある事を頼まれる。自分が不在の間、自宅の生き物”たち”の世話をして欲しいと。生き物を、命を預かるという事、自分も犬を飼っているがそれが持つ責任や重さをふと考えてしまった。世界を流転する村崎とモトコのメールのやり取りはすごく高山さんらしい雰囲気。作中で語られるパンダと人間との関わりの歴史もとても興味深かったです。 #NetGalleyJP2024/10/07
巨峰
46
職場を辞めて海外に急にいった同僚がマンションで飼っていた小動物の面倒を見ることになった主人公。その主人公と同僚のメールのやり取りが主なので、書簡体小説であるともいえる。パンダとか動物とかに興味をもてれば、楽しく読めると思います。さらに、いろんなウンチクとか哲学が語られます。ただ、そんなに長い小説じゃない。2024/12/01