出版社内容情報
中学校の国語教師・檀千郷(だんちさと)は、受け持ちの女子生徒から自作の小説原稿を渡される。その小説の中では、猫を愛する奇妙な二人組・ネコジゴハンターが大暴れしていた。そして檀先生は、ある条件下で他人の明日の体験が少しだけ観えるという、不思議な力を持っていた。ネコジゴハンターとは何か。父の言葉、悲観と楽観、猫と野球……、檀先生が「サークル」に関わるにつれ、物語は加速していく。小説を読む楽しさ、面白さに満ちながら、うつむく人を明るい方へとそっと連れ出す、一大エンターテインメント長編!
内容説明
未来を観て、人生を取り戻す。ある不思議な能力を持つ中学教師の檀。サークルとよばれるグループと壇先生が交差し、世界は変転を始める。
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ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
959
いつもながら疾走するスピード感の文体。ただ、今回は「先行上映」のアイディアに頼りすぎ、それに通俗ニーチェを持ち込んで、後は野となれ…といった、いささか投げやりとも思える構想。もう一つのアイディアである、小説内小説と小説との混淆といったメタフィクションめいた構成はそれなりに機能してはいるのだが。また、人物造型においては中学校の国語教師の檀先生を軸に据えたことが、かえって小説の展開をも拘束することになったのではないだろうか。他の人物も含めて、井坂作品にしてはいささか影が薄いようだ。2023/12/01
starbro
866
伊坂 幸太郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、ニーチェ的哲学エンタメ・テロ小説でした。著者が興味のあることや好きなもの、心配なことや、怖いことを詰め込んだせいか、消化不良でキレがない感じでした。 「アメショー ハラショー 松尾芭蕉」(苦笑) ネコジゴ(猫虐待者)は許せません(怒)アメショーは、伸びるのに、ロシアンブル(ー)が伸びないのが不思議でした。作中の天童をリアルの巨人軍に存在させたいです。 https://publications.asahi.com/peppers_ghost/2021/10/27
パトラッシュ
839
飛沫感染した相手の未来が少しだけ見えてしまう、中途半端な予知能力を持った教師という設定がユニーク。あるよりもない方がマシな力に振り回されながら、懲りずに教え子絡みの不審な話に巻き込まれてしまう。そこに別の教え子の書いた小説とリアルが微妙に重なり、どちらに自分がいるのかわからなくなるドラマが面白い。ネコジゴハンターや自爆テロ集団ら脇役も個性豊かで、シリアスとハチャメチャが程よく融合した良質のエンタメを堪能した。最後で東京ドームが建設されていない世界線なのが明らかになるが、ストーリーに加える意味があったのか。2022/07/05
青乃108号
756
小説中小説の登場人物、ネゴジゴハンターことロシアンブルとアメショーの掛け合いの妙が全て、と言って良い小説。物語の本筋の方は「マスゴミ」の代表格の<ある男>の煽り報道のせいで肉親を殺された、と思い込んだ被害者の会の当事者達が、その男に復讐せんと企てた大掛かりな計画を追う。クライマックスは満員の野球場を舞台に巻き起こる大パニック、になるはずだったのだが。さすがの伊坂幸太郎、面白く読める小説だったが、尻すぼみに終わってしまった感は拭えず。読後、ニーチェの「ツァラストラ」が読みたくなったのは俺だけではないだろう。2025/01/14
うっちー
733
稀有な伊坂ワールド全開。ニーチェの世界感は自分では宿題です2021/10/18