出版社内容情報
武田晴信(信玄)の下で調略・交渉・謀略など外交にまつわるすべてを請け負う計策師・向山又七郎。彼に下された命が「甲駿相三国同盟を成し遂げよ」。足を引っ張る武田の家臣たち、諸国のくせもの軍師・計策師たち。謀略渦巻くなか、又七郎は同盟を実現できるのか。
内容説明
槍も取らず、舌先で戦う男―甲斐・武田晴信(信玄)の側近向山又七郎は、外交交渉を担う計策師。不可能と見られた調略や降伏勧告を成功させて平然と生還する。元来飄々として捉えどころのない美男の剣豪は人を寝返らせ、騙して、武田に勝利をもたらすが、妻子を亡くし、己を使い捨ての駒だと自嘲するうち、心も荒んでいた。主君の敵を言葉で滅ぼしてきた計策師が、暇乞いと引き換えに晴信から下された最後の仕事は、武田が戦国の世を生き抜くための「甲駿相三国同盟」の締結という巨大な外交課題であった。足を引っ張る武田の重臣たちや刺客、次々と現れる諸国のくせもの計策師たち。要人の利害・裏切り・謀略に翻弄されながらも、又七郎は同盟を実現できるのか!?
著者等紹介
赤神諒[アカガミリョウ]
1972年京都市生まれ。同志社大学文学部を経て東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。2017年、『大友二階崩れ』(受賞時タイトル「義と愛と」)で第九回日経小説大賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
34
大友氏関連の作品が多い赤神諒には珍しい武田、今川、北条で結んだ甲駿相三国同盟を計策師を中心に描いた作品。 「計策」とは、外交上の目的を達するため、調略、誘導、説得、欺罔、提案、駆け引きその他、言葉を用いた非公式な交渉とそれに付随する準備・関連行為を指すとのこと。 甲斐武田家の計策師である向山又七郎虎継を主人公としたもの。いくつか城が登場しますが、このうち一番最初に登場した松本市にある平瀬城には行ってみたいと思った。 なんのために計策により同盟を結ぼうとするのか、計策師によって考え方が異なるところが面白い。2022/08/03
サケ太
23
読んでて楽しいエンタメ戦国ネゴシエーションもの。作者がブログで書いていた通り、“戦国版坂本龍馬”の物語。武田家に仕える“計策師”向山又七郎は様々な計策を成してきた遣り手であったが、その役目を辞めたがっていた。主、武田晴信は条件として“三国同盟”締結を突きつける。騙し騙され、因縁と奇縁が交わりどこへ転がるかわからない交渉劇。彼の成し遂げようとした“平和”は現代に引き継がれているのか。2019/10/09
maito/まいと
21
赤神流不可能プロジェクト成功のススメ(笑)戦国時代史上希に見る三者外交(武田・北条・今川)を題材にした本作は、難解な外交のせめぎ合い、一向にはかどらない駆け引き、そして主人公がマイナー、と難しい要素ばかり。それをプラスに転換する程よいデフォルメ演出と、熱い志、そして「半沢直樹」のようなラストのどんでん返し!。読者を引き込む感情曲線の作り方や、キャスティングの見事さは、歴史小説玄人もうなること間違いなし。強いて言うと、主人公とヒロインの設定が、ここ数作被ってるのが気になる(苦笑)2019/10/14
らいおねる
9
山本勘助や駒井高白斎の名前は戦国時代の武田家で聞いたことがありましたがこの本の主である向山又七郎という人物は知りませんでした。一応調べると架空の人物ではないんですね。ここまで重要な交渉してたらもっと表舞台に出てそうと思いましたが自分の勉強不足かも。武田信玄とのやり取りは想像でしかないと思いますがこうやって家臣を動かしてる感じでさもありなんと思いました。感想としてはやりきれない立場に見えるけどやりがいはあるんだろうなと。軍師的な位置の人はそういうものなんでしょうね。2023/08/16
Fumoh
6
武田家において向山虎継という実在した武将を、計策師(著者の造語)という外交軍師のような立場に仕立て上げ(これも著者のフィクション)、甲駿相三国同盟期の微妙な計略や政争を主に描いたエンタメ作品です。実在した人物とはいえ、99.99%著者のフィクションで出来上がった作品で、あの人気の武田家を描くというのは、実際その時点でかなり無謀な企てではあると思います。実際に読んでみると、設定としては面白いヒーロー小説なのですが、モチーフやキャラクター性、物語の展開などは、今までの赤神さんの作品となんら変わらず、2024/07/09