出版社内容情報
経済格差の拡大と社会構造の急激な変化が、ポピュリズムの台頭と社会の分断をまねいている。これらは社会から疎外された人々による平等な「尊厳の要求」に起因する。「人種、民族、宗教」などを脱し「理念」のアイデンティティーへと説く民主主義再生への提言書。
内容説明
1992年の大ベストセラー「歴史の終わり」以後、投げかけられてきた批判に、フクヤマ自らが答える。そして闘争の歴史と政治の刷新を“アイデンティティ”から考察。民主主義再生への提言―テューモス、承認、尊厳、アイデンティティ、移民、ナショナリズム、宗教、文化。一九九二年に考え始めてこれまで書き続けてきたテーマに立ち戻る。
目次
尊厳の政治
魂の第三の場所
内と外
尊厳から民主主義へ
尊厳の革命
表現的個人主義
ナショナリズムと宗教
宛先違い
見えない人間
尊厳の民主化
ひとつのアイデンティティから複数のアイデンティティへ
われら国民
国民の物語
何をすべきか
著者等紹介
フランシス・フクヤマ[フランシスフクヤマ]
スタンフォード大学フリーマン・スポグリ国際研究所オリヴィエ・ノメリニ上級研究員、同大学民主主義・開発・法の支配センター・モスバッカー・センター長。ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院、ジョージ・メイソン大学公共政策学部でも教鞭をとった。かつてはランド研究所の研究員や、アメリカ国務省政策企画部次長も務めた。カリフォルニア州に妻と在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
エリク
26
人間の世界の仕組みの一端がわかる。 どうした行動が「ヒト」といわれるのか?2020/01/07
sayan
23
著者は「歴史の終わり」を振返り「尊厳の承認が自由民主主義を脅かす可能性」を指摘したとする。その上でフクヤマは本書で「リベラリズムの核である「個人の自律(カント)をどこまで広く捉えるべきか」と論点を示す。1)共有された価値観がなければ個人の社会生活は不可能、2)競合する価値体系が不協和音を生む場合、アイデンティティの危機が生まれる、と言及する点は目を惹いた。また、個人が規範の檻から解放される=自由のあまねく承認と国民単位での集合的な承認は重なり合う、とルソーの著作に言及する。「自由の命運」もこの点を論じる。2020/02/27
ヤギ郎
16
著者の代表作である『歴史の終わり』から続き、トランプ大統領誕生以後の文脈を分析することが本書の目的である。今現在世界中で起きている社会問題に、「アイデンティティ」を繋げることが本書の議論である。テレビ等で「Black Lives Matter」やフェミニズム運動が報じられている。なぜ彼ら彼女らは「必死に」運動に参加しているのか。この運動の裏には、単なる人種や性別の「差」だけでなく、自身の尊厳を獲得するための人間的行動が現れている。ネットコミュニティに誕生するアイデンティティについても議論される。2020/07/27
奏市
13
『歴史の終わり』を著した米国政治学者の書。世界中で個人や小集団の承認欲求が膨大し、憎悪や排外主義に訴えるポピュリズム政治化が進む社会をいかに寛容で民主主義が機能する社会へ変容させられるかといった内容。「リベラルで民主的な政治の価値観や、多様なコミュニティを結びつけて繁栄させる共通の経験を中心に構築する」ナショナル・アイデンティティの重要性を主張してある。それを基に福祉国家として成功している北欧諸国、それが希薄で多様性がマイナスに働いたシリアを例に挙げるなどして。民族ではなく理念で纏まる国家へ。/図書館より2021/02/14
zel
9
難しかったけど、きっと全然理解できてないけれど、面白かった。アイソサミア(同等とされたい欲求)メガロザミア(ほかより抜きんでたいという欲求)テューモス(気概)の関係に納得。アイデンティティを切り口に世界を見ていて世界の見え方がまた変わって面白い!人ってなんだ?自分ってなんだ?人権って?などいろいろ考えながら読む。2020/09/11
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- 和書
- 俺の爺さまは半次郎