出版社内容情報
主人公・林ちひろは中学三年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。前作『あひる』が芥川賞候補となった著者の新たなる代表作。
内容説明
大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1218
家族小説である。ベストセラーになっているが、プロットにも人物造型にもとりわけインパクトがあるとは思えない。あるいはむしろ普通の家族が描かれるからこそ支持されているのかもしれない。両親も、語り手の「わたし」もごく普通である。もちろん、そうは言っても姉は家族からこぼれ落ちているし、両親はカルトめいた新興宗教に捉えられている。幾分かは覚めた視点を持ちつつも、わたしもまたその宗教の集会等には熱心に通っている。家も引っ越しが度重なるほどにどんどん小さくみすぼらしくなってゆく。そうしてみると、はた目にはこの家族は⇒2020/10/17
starbro
1045
今村夏子、前作の『あひる』に続いて2作目です。今回は長編で物語に引き込まれ一気読みしました。芥川賞受賞作の『影裏』は未読のため、何とも言えませんが、前回の芥川賞受賞作『しんせかい』よりも評価出来ます。芥川賞を受賞するには、少しインパクトが弱いのかなぁ?2017/08/07
zero1
965
信じる者は救われる?この世界観は「あひる」や「こちらあみ子」の今村にしか描けない!ちひろは体が弱かったが、「金星のめぐみ」という水で完治。両親は喜び宗教に嵌り姉は家を出る。読みやすいし笑えるが、闇を描いてもいいんじゃないかと感じた。主人公の視点が弱く、結果としてカタルシスが不足。「普通とは何」というテーマは「コンビニ人間」に通じるか。もし今村が「描かない表現」を狙っているとしたら天才。本屋大賞18年7位。芥川賞候補。80年生まれと若い作家で才能は私を含め多くの人が認めている。今後の活躍に期待したい。2019/06/06
ウッディ
931
娘の原因不明の湿疹に効果のあった水をきっかけに、新興宗教にはまっていく両親。親戚と絶縁し、貧しくなっていく家庭、父と母の奇行。かなり悲惨な状況にも関わらず、主人公ちひろの強さ故か、鈍感さ故か、物語は淡々と進んでいく。素直に宗教の教えを信じ、幸せに暮らす両親というちひろの目線、理屈で説明できないことに盲目的に傾倒しているようにしか見えない姉の視線。親と同じ教えを信じ、仲良く暮らすことも幸せの一つの形なんだと思わせるラストシーンと自分の生き方に子供を巻き込むという親の責任について、考えさせられる読書でした。2018/08/28
風眠
927
新興宗教=あやしい、という先入観があるせいか、こういうテーマの作品に対して、読者側の望む結末みたいなものを期待してしまう。でも実際はこの物語のように、淡々と静かに、いつの間にか生活に染み渡っていっているものなのかもしれない。病気、貧困、障害・・・そういった人生の困難の時、勧誘と気づかないまま信じて受け入れてしまうのも、人間の心の弱さであったり、愛情であったり、複雑な事情があるから善悪だけでは判断できない。だから断定的な答えを書けなかったのかもしれない。語らない部分を読者に考えさせる、これはそういう物語だ。2017/09/21
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