出版社内容情報
【文学/日本文学評論随筆その他】東日本大震災後、アートのもつ底力がこじあけた未知の社会性とは? 被災地支援に取り組む芸大生と写真家、陶芸家のタコツボ無人販売所、工芸家のウクレレ化保存計画……臨床哲学者が社会とアートの交差する場所に立つ日本の未来への刺激的評論。
鷲田清一[ワシダキヨカズ]
内容説明
人間の生きる技術としてのアートは、教育やケアの領域も横断する。被災地支援にとりくむ藝大生、東北の地域社会に入って制作する写真家、無人タコツボ販売所に作品をだす陶芸家…。現代社会の隙間で、生存の技法としてのアートと錯綜する社会との関係を読みほどく、臨床哲学者の刺激的な考察。朝日新聞「折々のことば」の著者による最新評論。
目次
1 「社会」の手前で
2 巻き込み―小森はるか/瀬尾夏美の模索
3 強度―志賀理江子の“業”
4 アートレス?―川俣正の仕事を参照軸に
5 ゆるい途―もう一つの
6 “社会的なもの”
7 “はぐれ”というスタンス
8 点描
著者等紹介
鷲田清一[ワシダキヨカズ]
1949年、京都府生まれ。哲学者。京都市立芸術大学理事長・学長。大阪大学名誉教授。せんだいメディアテーク館長。専門は臨床哲学・倫理学。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。関西大学文学部教授、大阪大学教授、大阪大学理事、総長、大谷大学教授をへて現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨッフム
7
鷲田先生の本、10冊以上は読んでるはずなのですが、読んでも読んでも底が見えません。揺るぎない知識量を土台にして、知識だけでは手に負えないものを扱う思想哲学の懐の広さ。アートという得体のしれないもの、人の数だけ答えのあるものを、未知であるが故に訴求力を持つという長所に即して、多面的に照らしていく言葉のさじ加減が名人芸の領域でした。難解なテーマであることは間違いないのですが、まさに「わからなさを蝶番にして」、好奇心が膨れてゆく感覚が、清涼な一冊です。本書で紹介されていた中では、蛸壺の無人販売の話がお気に入り。2017/03/06
にゃら
3
面白そうな人が日本にもいるんだなと安心できる本。現代アートの話ってなかなか話題に上がらないから貴重だった。後半は社会学の話になっていくんだけど、ちょっとうまくまとめようとしてる気がしてだれる。2017/05/24
ミッキー
2
哲学を読むと頭の体操になるというのが実感出来る本です。何処へ向かうのか予想出来ない話が、最後にこう纏めるのかと膝を打つ感覚です。2016/10/02
ますたけ
1
具体的な部分は読めるけど、ちょっとでも抽象度が上がると、わからなかった。2016/10/09
やんぬ
0
やはり鷲田さんということで、前のめりにならないと難解でついていけなくなる。 多分本作の主題からは振り落とされてしまったがわ、周辺に散らばる素敵な言葉にたくさん触れることができた。2022/06/09