内容説明
菊山尚泰は1924年、韓国の貧しい農家に生まれ、十八歳の時に「夢の国」を目指し日本に出稼ぎに来た。鉱山で働くうちにその腕力だけで頂点に立ち、どんな荒くれ男たちからも恐れられる存在になった。終戦後、菊山は夜の街の用心棒、債権回収業から金貸しになり巨額の富を得て成金に…。1959年、菊山に待望の息子、翔太が誕生し幸せな日々を過ごしていたが、妻が突然、出奔すると菊山の人生が激変した。―自らの父親をモデルに無期懲役囚が放つ衝撃の小説デビュー作。
著者等紹介
美達大和[ミタツヤマト]
1959(昭和34)年生まれ。無期懲役囚。罪状は2件の殺人事件。自身の責任として仮釈放を放棄、終身刑に服する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koki Miyachi
4
韓国の貧しい農家から、18才の時に「夢の国」日本に身一つでやってきた菊山尚泰。鉱夫、用心棒、金融業と鬼のような腕力でのし上がる。妻の出奔、息子翔太の誕生を境に人生が大きく変わってゆく。喧嘩や殴り合いの血生臭い描写が続く中、全体に通奏低音として流れるのは、朝鮮人としての紐帯の固さ、菊山と翔太の間の愛情と確執だ。乱暴者の父親に憎悪を持ちながらも最後は父の息子であることを誇りに思う息子。父親の人生がモデルとのことだが、まさに事実は小説より奇なり。筆者は獄中でどのような思いでこの小説を書いたのだろうか。2013/01/01
Q
3
無期懲役囚による父親をメインにした自伝的小説。他の美達氏の作品に比べ、事実だとしてもずっと暴力で解決する父を賛美するような内容で全く共感できなかった。このような父親を尊敬し、その教育にはまってしまったから2人殺すことになってしまったのだろうな、とわかる。他の作品では獄中で自身が犯した殺人について考えを改めるような記述もあるが、この本を読むと考えはまったく変わってないことがわかる。美達氏は知能も高く、人間として超人的な能力・魅力を持った方だとは思うがやはり根底の考え方には賛同できない。2019/12/05
てんてん
3
限りなくノンフィクションに近いだろう小説。貧しい韓国の農家から日本の炭鉱へ働きに来て腕力を頼りにのし上がったの息子として作者が生まれる。暴力的な父を憎みながらも、父によって培われた真っ直ぐすぎる性格と、腕力、高いIQ。 濃厚すぎる父子関係は韓国人の血のなせる業なのか・・? 2018/09/06
あられ
3
無期懲役囚の小説デビュー作であるが、おそらく限りなくノンフィクションに近いのだろう、と思った。出だしは、殴ったり、蹴ったり、頭突きしたり、喧嘩する描写が続き、しかも、茹で過ぎためん類のような物切れの文章で、投げ出したくなったが、後半、著者と思われる子どもが生まれてから、がぜん、面白くなった。ひとりの男の伝記、韓国人にもいろいろな考え方があるのだな、と思った。また、著者が殺人事件を起こした動機に触れられているところが興味深かった。2012/08/04
プチシゲ
3
う~ん。熱い心は分かるが小説としては物足りない。もっと深層を衝いた物を期待してしまった。前作『人を殺すとはどういうことか』が強烈だっただけにイマイチ感が強い。2012/07/25