出版社内容情報
生誕100年を迎える太宰治の文学の魅力は現代の若者をも捉え、空前の《太宰ブーム》が訪れている。本書は太宰文学の最高峰『斜陽』のモデルとなった太田静子と太宰との間に生まれた著者が、満を持して語る「父と母の愛のすべて」である。『斜陽』は母・太田静子の日記をそのまま写した箇所も多い。父・太宰の男としての狡さなども容赦なく見据えながら、尊敬する「文学者・太宰」を真正面から描いた著者渾身の書。
内容説明
生誕一〇〇年、父として、男としての太宰治の実像がいま明らかに。
目次
下曽我
斜陽
めばえ
著者等紹介
太田治子[オオタハルコ]
神奈川県小田原市生まれ。明治学院大学英文科卒。1976~79年、NHK「日曜美術館」の司会アシスタントを務める。86年、『心映えの記』で第1回坪田譲治文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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るんるん
29
母、静子は肺炎で子を亡くした経験をもち罪の意識が太宰の小説をひきよせる。内面とはうらはらに無邪気なファンの側面と行動力。太宰への恋心は無垢でかなしい。「斜陽」が世にでる頃はまだ母のお腹のなかにいた著者。母の孤独な子育ては泣きながら笑いながら明るい。この子はわたしのかわいい子でいつでも父を誇ってすこやかにそだつことを念じている、と残した父、太宰。父母のこころの軌跡をおうことは苦しみも伴っていても、励ましもある。2014/06/27
あつひめ
23
関わった女だけが知りえる太宰の魅力・・・。フツーの感情では耐え難い事も太宰の魔法によって耐えられる。気障で罪作りな部分が作品にもいかされているのだろうか・・・。2010/07/15
人工知能
9
太宰が「斜陽」を書くのに多くの部分を拝借した日記、それを書いた太田静子と太宰の間に生まれた子供が著者。主語の使い方からも、母とは距離が近く、太宰は決して父とは呼ばない。この書から、太宰の「サービス精神」、頼りなさ、素直さ、小説に対する厳格さ、など一筋縄ではいかない人間像と、太田静子の天真爛漫さ、率直さ、浮世離れしたところなどが浮かび上がってくる。「斜陽」に出てくる「M・C」という結びだったり、腹の中の蛇のくだりだったり、は日記から拝借したもの。そういう感覚の持ち主に太宰が惹かれたのはわかる気がした。2017/07/04
ぴの
5
最近、斜陽を読んでいたのですごくよかった。太宰治と太田静子のことをすべて見ていたように詳しい。その二人の子供であることを時々忘れて熱中してしまった。2015/07/14
アンさん
4
両親がどうやって出会い、娘である自分が生まれたかを母の日記をもとに淡々と描いています。太宰治ファンはちょっと苦しくなるくらい自分本位で無邪気な父親と、それを承知のうえで子どもを作ろうと近づく母親の描写に作者の覚悟を感じます。ただ、2人の共通な想いは「『斜陽』を名作にする 」こと。母の日記を見て着想を得て喜ぶ父。出版された「斜陽」を見て自分の日記の文がそのまま使われていることに満足する母。2人がこんなに人生をかけて作った「斜陽」を読みたくなりました。2022/07/31