出版社内容情報
三万人もの死者を出した作戦は、どのように立案・遂行されたのか。牟田口司令官の肉声、司令部の状況を詳細に伝える元少尉の日記、生き延びた兵士たちの証言などを通じて、太平洋戦争で最も無謀といわれる作戦の全貌に迫る。現在につながる日本社会の病理をえぐり出し大きな反響を呼んだ単行本、待望の文庫化。解説=大木毅
内容説明
三万人もの死者を出した作戦は、どのように立案・遂行されたのか。牟田口廉也司令官の肉声、司令部の状況を詳細に伝える元少尉の日記、地獄の戦場を生き延びた兵士たちの証言などを通じて、太平洋戦争で最も無謀といわれる作戦の全貌に迫る。現在につながる日本社会の病理をえぐり出し大きな反響を呼んだ単行本、待望の文庫化。
目次
序章
第1章 “責任なき”作戦認可
第2章 度外視された“兵站”
第3章 消耗する兵士たち―軽視されてゆく“命”
第4章 遙かなるインパール―総突撃の果てに
第5章 遅れた“作戦中止”
第6章 地獄の撤退路―白骨街道で何があったのか
第7章 責任をとらなかった指導者たち
終章 帰還兵たちの戦後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
70
愚戦の代表のように言われるインパール、ジャーナリストが現地や今や100歳になるような生き残りの方々を丹念に取材して番組にしたものを再構成してある。特に本書で重要と思われるのは、司令部付の若い将校が残した日記だ。取材当時存命で、インパール後もビルマ戦線でマラリアに冒されながら戦い続けた方の、まさに本音が綴られたもので、上級将校の弁明が白々しくすら感じられる。本書を読むと、やはり大本営にはじまる日本の軍事組織の欠陥が端的にあらわれた戦いとの感を強くする。巻末の大木毅氏の解説も一読の価値あり。2023/08/29
どら猫さとっち
6
2017年NHKスペシャルで放映、大反響を呼んだインパール作戦の真実を書籍化。太平洋戦争で、最も無謀で悲惨な作戦として伝えられるインパール作戦。司令官の牟田口廉也の想いは?作戦で犠牲になった人たち、生き抜いた人たちの想い。今では東京五輪やマイナンバー、大阪万博などにも、インパール作戦となぞらえ、警鐘を鳴らし批判している。この作戦の悪性は、21世紀の令和の現在でも受け継がれている。本書を読むことは、歴史を学ぶという意味で、有意義なことではないか。2023/08/14
artillery203
3
「戦慄の記憶インパール」人情という曖昧な気持ちで、兵站のみならず、あらゆる「穴」が明確に見えているインパール作戦を推し進めて、結局破滅した日本軍。作戦中止後、上層部は責任を免れ、独断撤退の佐藤師団長は精神錯乱として、作戦全体も総括されず。問題点は現代にも通じる。のみならず、楽観、責任逃れ、自分の中にないか。同じ状況で空気について流されないか。よく自分に言い聞かせないとならない。2025/03/20
ara
3
八甲田山雪中行軍に次ぐ、日本の構造的脆弱性を表していると揶揄されるインパール作戦。 名前は何となく知ってはいたが、詳しい内容までは知らなかったので本書で学んでみたいと手に取ってみた。 「大東亜共栄圏」等、初めて知るワードもあり、まだ先の戦争について知らないことが多々あると実感。 しかし、図式的には八甲田山と全く同じと言っても過言ではない。結局、上層部がしっかりしてないと、大損害を被る、しかもインパール作戦の場合は上層部も大して責任を取らなかったというから酷いもんだ。仲間の肉を食べる等強烈な内容もあった。 2024/03/31
おやぶたんぐ
2
既読の「福島第一原発事故の「真実」」同様、NHK取材班の力作。補給を軽視し、戦術をもって戦略を制しようとする狂気の実態を知らぬ敵方の賞賛など何になろう。現場の苦闘を無にする“日本的”感情による決定と無責任の恐ろしさ。2023/08/19