出版社内容情報
白人中産層に迎合する内政と,中国との和解を果たした外交.ニクソンのしたたかな論理に迫る決定版.
内容説明
トランプが強調する「アメリカ第一主義」。そのルーツはニクソンにあった―リベラル層への強い不満を抱えた白人中産層に徹底的に迎合する内政と、中国との和解を果たし冷戦下の世界に衝撃を与えた外交。アメリカ社会に大きな変容をもたらしたニクソン政権の、したたかな論理とはどのようなものだったのか。徹底した現場取材からニクソンの論理に迫った名著をその後の論文を加える形で再編集。
目次
就任式の日(はじめに)
第1章 発生/蒼ざめた出発
第2章 賭け/南部戦略
第3章 迎合/ニクソン・ドクトリン
第4章 転換/アメリカと中国
第5章 崩壊/ニクソン時代の終わり
付章 トランプとニクソン
著者等紹介
松尾文夫[マツオフミオ]
1933年8月東京都生まれ。学習院大学卒業後、共同通信社に入社。ニューヨーク、ワシントン特派員、バンコク支局長、ワシントン支局長、共同通信マーケッツ社長などを歴任。2002年5月よりジャーナリストとしての活動を再開。2019年2月にアメリカで亡くなる。『銃を持つ民主主義―「アメリカという国」のなりたち』(小学館、日本エッセイスト・クラブ賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紙狸
17
2019年刊行。トランプ大統領を理解する上で、ニクソン大統領と比較することが有意義だと主張する。説得力はある。ニクソンが1971年に行ったカンザスシティ演説は、米国が世界の警察官ではなく、経済的には「競争者」だという考えを打ち出していた。なによりもトランプ、ニクソン両者の共通点は、社会の亀裂を前提に政治戦略を組み立てた点だと指摘する。この本の成り立ちは異例だ。著者は共同通信記者で底本は71年に刊行したニクソン論。70年代の論考、さらに19年に書いたトランプとの比較(著者死去のため未完成)を加えた改訂版。2025/05/09
shunichi
1
ニクソンがケネディ・ジョンソンのあとを受けアメリカを「世界の警察官」から利己的な「競争者」へと転換させようとしていたことが良くわかった。ウォーターゲート事件のことにもっと触れながらニクソン論を展開して欲しかった。また、トランプと対比するのはあまりにも唐突、付け焼刃的。2020/04/20
aruku_gojira
0
ケネディ、ジョンソンのあとを継いだニクソン。民主党から共和党への政権奪還だったが、著者の松尾氏は「蒼ざめた勝利」だったと強調する。 外交方針が「世界の警察官」から自国の利益を追求する「競争者」に変わ理、外交方針を変えたのは、次の大統領選挙再選に向けた「南部戦略」のターゲットである全米の保守的で、真面目で、でも偉大なアメリカを追い求める愛国者たち、への売り込みという背景があり、と興味深い。 ニクソンがとった政策の性格を受け身と評した点も興味を引く。 著者が亡くなった未完成となった付章が惜しまれる。2021/01/31
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