内容説明
近代日本が植民地帝国へと突き進むなか、非戦・自由・平等の社会主義・無政府主義を根絶やしにするために起こされた最大の思想弾圧「大逆事件」。巻き込まれた人々の死と生、遺族の苦しみ、そして権力に抗う民衆の姿。一〇〇年の時を経て綴られる群像劇が日本史の暗部を照らし出す。日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した話題作に、刊行後の取材の成果を「補記」として収録。
目次
かなしき「テロリスト」
縊られる思想
海とさだめししづく
死者たちの声
謀叛論―慰問
宿命
抵抗
宗教と国家
傷痕
いごっそう
再審請求
攻防
疑惑
著者等紹介
田中伸尚[タナカノブマサ]
1941年東京生まれ。新聞記者を経て、ノンフィクション作家。『ドキュメント 憲法を獲得する人びと』(岩波書店)で第八回平和・協同ジャーナリスト基金賞。『大逆事件―死と生の群像』単行本で第五九回日本エッセイスト・クラブ賞。個人の自由と国家の関係を問う著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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belier
5
大逆事件では12人が死刑、12人が死刑から無期に減刑された。事件の様相と犯罪者とされた人たちの人間像が丁寧に調べられている。史実は知っていたが、国家というものが無実の人を平気で犯罪者に仕立て上げ、殺してしまえるものだということを改めて教えられた。過激な行動や言動があった者と何らかの絡みがあっただけで罪人にされたのは、正義感が強く、弱者を救いたいと願い、家族への思いやりも強い人たちだった。彼らを国家に敵対する者として明治政府は許さず、実情を知らない世間も悪人扱いした。逆境の中、無罪と信じ続ける家族が感動的。2022/02/07
まえけん
1
大逆事件は終わらないーー著者は100年あまり経た近代日本の暗部に光をあてた。犠牲者遺族の願い、忘れられた人々を記憶、記録する営み。非公開の公判記録がないことは驚きだ。そして、なお残された事件トゲは、再審請求による無罪でしか勝ち取れない。2022/03/04
YNR
0
大逆事件について。2018/11/28
ヒ
0
小山松吉、平沼騏一郎2018/03/09