出版社内容情報
新発掘で本当は何が「わかった」といえるか? 考古学とナショナリズムとの危うい関係とは? 発掘の楽しさと現代とのかかわりを語るエッセイ集。
内容説明
新発掘で「わかった」といえるのは実のところ何か?世界遺産指定は「一点豪華主義」でよいのか?考古学とナショナリズムとの危うい関係をどう考えるか?藤原京、平城京跡の発掘や、文化財保護行政を担った考古学研究者が、発掘の楽しさと現代とのかかわりを、軽妙かつシャープに語ったエッセイ集。現代文庫オリジナル版。
目次
1 ナショナリズムと考古学(考古学への途;グスクとシロとチャシと;ナショナリズムと考古学 ほか)
2 文化財保護と世界遺産(生きている文化遺産;日本文化財保護小史;遺跡の保護と開発技術者 ほか)
3 発掘調査、いまむかし(考古学、みかけだけのはなやかさ;藤原京とその調査;平城京跡発掘二〇年 ほか)
4 文化財科学の出発(文化財と探偵;アナログとデジタル;発掘を科学する ほか)
5 学んだ人、学んだこと(梅原末治さん―刻苦勉励の人;小林行雄先生の仕事;小林さんと小林先生 ほか)
著者等紹介
田中琢[タナカミガク]
1933年、滋賀県に生まれる。考古学研究者。京都大学文学部卒業。奈良国立文化財研究所所員として平城宮跡の発掘等にかかわる。また、文化庁文化財鑑査官として文化財保護行政を担う。94~99年、奈良国立文化財研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
15
田中さんが言うと説得力が違う! (^^;) →「考古学者は、わからないものはなんでも宗教とか祭祀とか言うんです」2020/09/05
Takashi
3
考古学や埋蔵文化財行政と社会や歴史とのかかわり、あるいはかかわり方や理念を綴った一書。原典は20年以上前のものが大半だが、今なお強い訴求力をもって読み手に伝わってくる格調高い文章。なかでも巻末の人物評伝は名文で、小林行雄の評伝など、思わずホロリとさせられてしまう。無論、考古学の初学者にも手に取ってほしいが、埋蔵文化財行政の第一線で活躍する方たちにも、「なぜ遺跡を守らねばならないのか」といった根源的なテーマに立ち返った時に、是非読んでほしいと思う。2016/07/23
おらひらお
3
2015年初版。もと奈良文化財研究所所長が折々に触れて書いたエッセイやコラムの中から現代との関連が深いものを集めたものです。今日の調査・研究体制の形成過程や遺跡の整備、ナショナリズム、ITなど個々の文章では読み飛ばしそうなものでも、まとめて読むといろいろと感じるところがありますね。2015/03/31
Mentyu
2
過去を再現する方法として文字で遺された記録ではなくモノを用いる考古学。目の前の遺構・遺物を詳細に観察し扱うことが方法論となっているため文献史学以上に社会に対して視野狭窄に陥りやすい問題を抱えている。本書はそんな考古学を現代社会との関係の上で幅広く論じた短く分かりやすいエッセイ集であり、考古学を志す人にはぜひ読んでもらいたい内容となっている。2015/07/10
ちはなゆ
2
収められた文章は、昔のものも多いが、古さを感じさせない。考古学を本当に広い視野から考えておられ、実に勉強になった。考え抜かれた一語一語は、読みやすく、重い。2015/05/18