内容説明
原子力発電をめぐる世論は移り変わりながら、「3・11」まで「クリーンで安全な原子力」と歓迎をしていた…。メディア・広報、タウンミーティング、教育など、数多くのチャンネルを通して誘導され、操作される世論のありさまが、関係者への直撃取材で明らかになる。道路建設、五輪招致など様々な場面で、国策・政策の遂行にむけ、いかに「民意」が「偽装」されるかを浮き彫りにした話題書に、集団的自衛権をめぐる言論状況に迫る新稿を加え、深まっていく危険な動きへの警鐘を鳴らす。
目次
第1章 言論人が国策を先導するのか
第2章 つくられた原子力神話1
第3章 ジャーナリズム、教育をまきこんで―つくられた原子力神話2
第4章 国策PR
第5章 捕鯨国ニッポンの登場
第6章 道路とNPO
第7章 派遣村バッシング
第8章 五輪招致という虚妄
第9章 仕組まれる選挙
著者等紹介
斎藤貴男[サイトウタカオ]
1958年東京生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学商学部卒業。英国バーミンガム大学修士(国際学MA)。新聞記者、月刊誌編集者、週刊誌記者を経てフリー。『「東京電力」研究―排除の系譜』(講談社)で第三回「いける本」大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
23
11年初出。警察官僚から読売新聞社の社主に転じ、日テレ放送網を構築した正力松太郎が原子力の父と呼ばれて以来の、 原子力事業との縁(48頁)。現代のジャーナリズムは、自らが政府の宣伝機関であり続けていることに、疑いさえ抱いていない (90頁)。古賀茂明氏のコメントは正しいと思うのだが? 日本原子力学会:原子力ムラの総本山(100頁)。何のための研究なの か? 2015/04/14
hatayan
14
原子力のPRに莫大な宣伝広告費がつぎ込まれていることは3.11のあと広く知られたところですが、道路建設、オリンピック、捕鯨の継続。国策への支持が為政者によって巧みに作られていることを告発しています。 不都合な面を覆い隠した宣伝広告は、情報操作とも呼べるものなのでしょう。 しかし、公共、民間を問わず、目的を達成するために効率の良い手段を選ぶことは、ある意味では当たり前のこと。国策の前に我々はなすすべがあるのだろうかと思ってしまったのは、自分が年をとった証拠なのでしょうか。 2018/11/09
たまご
12
わたしたちが目にするオールドメディアと呼ばれるものには,その方向に世論を導きたい意図を持ったものが含まれていて,それを多く目にすることで何となくそういうものだという雰囲気が形成されていく.その意図に合わないものは,メディア側も「空気を読んで」掲載されにくくなっていく.とても日本的な.日本ではメディアは,空気を読んじゃいけないのかもしれない. 小さいころ,小松左京の原子力推進キャンペーンが依頼元とおもわれる短編を読んだのが,ずっと心に残っていてこういう話が話題になるにつけ,思い出します.2025/02/03
OjohmbonX
3
例えば高木徹『国際メディア情報戦』の海外の事例だと、メディアに全力でアプローチして物理的に人さえ消して、世論や決裁権者の認識形成を当事者が徹底して意識的にやる、それが両陣営でバランスするっていう話だけど、本書だとプレーヤー(当事者や報道関係者等)は全力で空気を読んでるだけで、世論操作の意識もないまま結果的にぬるぬる一方へ偏ってくって姿が多くて日本らしさがある。民意が形成される手法やプロセスが実例を交えながら解説されていくのかなと思ってたけど、アンフェアな事例を著者の価値判断と混在させながら紹介していく本。2016/07/11
s2013253
3
(A+)なかなか面白かった。原発から捕鯨、オリンピック、選挙まで色々な話題が出てくる9章からなる本。ジャーナリズムが機能していない一端も見えてくる。最後に全体のまとめでもあると本の趣旨がもっと引き立った気はする。2015/05/03