内容説明
一九八四年、電気事業連合会は青森県知事に核燃料サイクル基地の建設受け入れを正式要請する。巨大開発の美名の下に農民たちを追い出し買収を進めた六ヶ所村の開拓地こそ、その立地点であった。日本の核センター建設は、偽計と裏切りから始まった。そして二〇一一年三月、またしても核の脅威に直面しながらも、なお六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場の強引な操業を図るのは、日本の核武装への第一歩である。一九七〇年から現地取材を続けてきた渾身の労作。毎日出版文化賞受賞作。
目次
8 国家石油備蓄基地
9 満州・弥栄村開拓団
10 核燃料サイクル基地
11 弥栄平の崩壊
12 泊のひとびと
13 「土地は売らない」
14 下北核半島への抵抗
15 「再処理工場の黄昏」
補章 下北核半島化の拒絶
著者等紹介
鎌田慧[カマタサトシ]
1938年、青森県に生まれる。ルポライター。『六ヶ所村の記録―核燃料サイクル基地の素顔』で毎日出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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桔梗の積ん読?本棚
感想・レビュー
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太田青磁
10
240ヘクタールに及ぶ広大な原野が押しつぶされ、その上に51基の原油タンクが建設された・石油と原子力。このふたつの国家安全保障のツケが、貧しい開拓農民にまわされた・村長選挙の応援に大臣が応援に来るところですから、自民党六ヶ所村ですなッ・われわれ百姓するのに田畑売ったら終わりだべ。なんでメシ食うの。年もとってるし、子どもたちはいまさら漁師はできない。経験ないわけさ・「位置図」には、いまわたしたちが通り抜けてきた道が書き加えられていて、「運搬専用道路」とある。が、下の英文の記述には、「核物質運搬道路」とある2020/09/25
ユ-スケ
2
ようやく読了 この国の政治というのがどのように行われていくのかが手に取るようにわかる いや、そこに暮らす人々の生活を無視した政治というのはもはや政治とは呼べないだろう 2020/03/30
ryuetto
2
貧しい開拓民から土地を取り上げていく過程、だまし討ちのように議会で採決、開発が来て、工場の立地で暮らしがよくなるという話が、どんどん切り替わっていって、石油のコンビナートになり、核燃料施設になっていったという、その流れが、丁寧に説明されています。 反対運動をしていた人々の個人的な歴史、満州の開拓民だった時代と、日本に引き揚げてから、改めて六ヶ所村を開拓していく、昭和の歴史を丁寧に教えてくれたのも助かりました。こういうのは、学校で教わらない、親の世代、その上の世代の記録だから、貴重だと思います。2012/05/19
odorusyounikai
1
何度もため息をつきながらこの長い物語を読み終えた。鎌田さんが最初に取材を始めてから40年以上の歳月が流れ、その間にスリーマイル、チェルノブイリ、そして福島原発事故という大惨事を経験してもなお、核燃サイクル堅持を叫んで青森にお金を落とすために全国の原発を動かし続けようとしている三村知事や、「世界一安全な原発」を再稼働させようとしている安倍首相の姿は、ここに登場する竹内知事や北村知事以上に、県民や国民の真の幸せを考えない醜悪なものだ。鎌田さんは昨年も今年も3.11あおもり集会で「白河以北一山百文」という言葉を2013/03/13
あきかん
0
ようやく読了。単行本出版当時から読みたいと思ってたもの。20年の記録どころか100年以上前に遡って語られる。子供の頃にその後始末がいろいろ騒がれてたむつ小川原開発のこともまあわかった。圧巻なのは、語られる取材対象者の何人かの前史というか個人史。個々の人生が政治に翻弄されている様が浮き彫りにされる。経済基盤が弱ければ弱いほどそれは顕著だ。日本という国家は戦前からずっと一人一人を大事にしてこなかった。人生は属する国家に大きく左右される。◆上下とも巻末に年表があるが、ここでは作成者の論評というか感想は→2014/07/04