内容説明
その格調高い演説で国の内外に感銘を与えたヴァイツゼッカー元ドイツ大統領。在任中、敗戦四十年を機に連邦議会でおこなった名高い「荒れ野の四十年」から、退任後、日独の戦後を比較した「水に流してはならない」まで、珠玉の十一篇を集成した。酷しい体験と深い思索に支えられた演説は、言葉がもつ力強さを伝える。政治家の言葉が軽くなっている今の日本で味読されるべきであろう。
目次
荒れ野の四十年
パトリオティズムを考える
基本法―揺るぎない自由の保証人
自由に堅く立つ
変革期ヨーロッパの「徳」
統一の日に―統一も自由も
党派を超えて―ブラントを悼む
暴力を排す
無関心の名の、心に着せた外套を脱ぎ給え
言葉の力
水に流してはならない―ドイツと日本の戦後五十年
著者等紹介
ヴァイツゼッカー,リヒャルト・フォン[ヴァイツゼッカー,リヒャルトフォン][Weizs¨acker,Richard von]
1920年生まれ。ドイツの政治家。六年の兵役のあと、戦後、実業界を経て政界へ。西ベルリン市長ののち、84‐94年第六代連邦大統領。大統領在任中に念願のドイツ統一が実現
永井清彦[ナガイキヨヒコ]
1935年生まれ。東京大卒業後、朝日新聞社、ドイツ海外放送などを経て、桃山学院大、共立女子大教授など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
21
ヴァイツゼッカー氏の大統領在任中の演説集。著名な85年の「荒野の40年」を収録。今の自分には、東西冷戦が西側の勝利で収束を迎える中、国家に対する個人の責任や、自由を守るということの意義と態度を問うた89年の演説に感じ入る。それはまさに今の私たちに最も欠けているものではないか。また90年1月の演説でグローバル資本主義の問題に言及していることに衝撃を受ける。氏は政治が市民権と人権に結びつくヨーロッパ文化の徳によりこれに対峙すべきとしている。三十余年を経て今ならなんと言われるだろう。2024/02/29
ののまる
8
こんなリーダーが日本に戦後一度でもいたらな… 最後の日本とドイツの戦後について触れた「水に流してはならない」は、日本人はみんな読んだ方がいい。2021/03/31
Ex libris 毒餃子
5
記念すべき1000冊目。私の読書歴という歴史も直視することで来るべき2000冊目にどのように取り組むか、考えて行きたい。2015/07/18
sasha
4
私が下手な感想を書くより、本でもらった方が確実にいいと思う…。いいよな、自分の言葉を持った政治家がいるって。日本にも過去には「反軍演説」の斎藤隆夫などがいたけどね。書いてもらった現行の内容さえ頭に入ってない人が、文節無視して棒読みだもんな。誰とは言いませんが(ほぼ言っているか)。2020/06/04
Amano Ryota
3
最近は、暴言や恫喝など、言葉の力の負の側面、(相手を理解する言葉、和解するための言葉でなく)相手を屈服させる言葉、支配する言葉というのが、どうやら一般的になり(というのが言い過ぎなら、何かそういうものに人々が慣れ)つつあるように感じる。自分もそういう感覚に鈍くなっているのが怖い。こういう時だからこそ、本書は読まれるべきだと思う。この演説集の言葉は、不特定多数の人たちに語られているのだろうけど、同時に特定の私に向けられているメッセージなんだと理屈じゃなく分かる。こういうことが出来るのが言葉の力なんだと思う。2015/02/17